東西の古典を、きわめて平易な現代語に訳出する試みです。
意によって大幅に構成を改編し、読みやすくするために潤色を施しています。

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超訳【金剛経】

第14話 そして君たちは(離相寂滅分)

2008.11.23

その時、突然スブーティの眼から涙がこぼれ落ちました。
涙はとめどなくあふれて止まりません。

スブーティはその場に崩れ落ちて泣き続けました。
泣くだけ泣くと、スブーティは涙をぬぐって立ち上がり、こう言いました。

「・・・先生、なんと素晴らしいことでしょうか。
師匠、これは本当に・・・なんというか素晴らしいことです!

こんな素晴らしいお話を聞くことができて、私は今初めて、自分の頭で考えることができるようになった気がします。

ああ、私はもう長いこと修行を積み重ね、色々な人からたくさんの話を聞いてきましたが、このような素晴らしいお話は初めて聞きました。

先生、もしもこのお話を聞いて「おお、素晴らしい!これこそ真実だ!!」と気づくことができる人がいたなら、その人もまた「人の姿をした奇跡」となる能力があるということになるでしょう。

なぜならば、「「これこそ真実だ!!」という思い」は、実は「思い」ではないからです。

そしてまたそんな人たちには、「自分がいる」などという思いもありませんし、「他人がいる」などという思いもありません。

「生きている」などというカンチガイもなければ、「物質が存在する」などというカンチガイもありません。

ついには、「思う」とか「思わない」とかも「思わない」のです。」

ブッダはそれを聞くと言いました。

「うん、そうだよスブーティ、全くその通りだ!
私が今したような話を聞いて、びっくりしたりビビったり気味悪がったりしない人、そんな人こそが「最高の智慧の完成」に最も近い人たちなのだ。

なぜかというと、実のところ「最高の智慧」が完成することなどはないからなのだ。

それを理解することこそが、本当の「最高の智慧の完成」なのだ。

そしてまた、「耐え忍ぶ」ことは「耐え忍ばない」ことと同じなのだ。

実は私は過去500回、「スーパー忍耐野郎」としての人生を繰り返した実績を持っている。

そんな私だからこそ言い切ることができるのだが、「忍耐」は、断じて「忍耐」ではない。

かつてこんなことがあった。

ある時、私が街外れで説法をしていると、若くて美しい女性が大量に聞きにきてくれた。
それはそれでとても嬉しかったのだが、実はその女性たちは、たまたま近くに来ていた王様のハーレムの女たちだったのだ。

私と楽しそうにしている女たちを見た王様は嫉妬に狂い、私を捕まえると制裁を加えはじめた。
鼻をそぎ落とされ、耳をそぎ落とされ、ついには手足もバラバラにされたのだ・・・

もしもその時、私が「自分がいる」などというカンチガイをしていたならば、それはもう「忍耐」どころではなく、ヒドイ「被害者意識」を抱いたに違いない。

「私には基本的人権がある」、とか、「ひとりの命は地球よりも重い」とかに始まる一連の思い違いをしていたとしたなら、被害感情は極限までたかまって、必ずや「応報感情」を抱いたハズだ。

しかし、私はそれらのカンチガイや思い違いに陥っていなかったので、百害あって一利もありゃしない諸々の感情を抱かずに済んだのだ。

それこそが、私が「スーパー忍耐野郎」であり続けることができた理由なのだ。

だからスブーティ、立派な人になりたいと思うのであれば、あれこれと愚にもつかないことを考えることはやめなさい。

外見についてあれこれ考えることをやめなさい。

音についてあれこれ考えることをやめなさい。

匂いについてあれこれ考えることをやめなさい。

手触りについてあれこれ考えることをやめなさい。

味についてあれこれ考えることをやめなさい。

そしてあれこれ考えることについて考えることもやめなさい。

私のした話にこだわることをやめなさい。

私のした話以外のことにこだわるのもやめなさい。

どんなことであろうとも、こだわってはいけない。

そして「こだわらない」ことにこだわるのもやめるのだ!

・・・そんな気持ちで、生きとし生けるものすべてに奉仕しなさい。

とは言っても、「気持ち」を持つことは持たないことと同じだし、「生きとし生けるもの」は、実は「生き物」ではないのだ。

・・・どうした、わけがわからんか?

しかしな、スブーティよ、「究極の真実」に目覚めた者がそれをあるがままに表現しようとすると、こんな言い方しかできないのだよ・・・

心配するな、私はウソは言わないよ。

お前も「究極の真実」に目覚めた時にはハッキリとわかるハズだ。

私が話したことの中に「正しい」ことはひとつもなく、「間違った」こともひとつもなかったということが。

スブーティよ、恐れるな!

例えば、眼が開いていたとしても完全な暗闇の中では何も見ることができないが、夜が明けて太陽が昇れば見えるようになるだろう。

立派な人になることを目指す者たちは、日々の努力を絶やしてはならない。

心配するな、スブーティ、私を誰だと思っている?

私こそは、「究極の真実に目覚めた者」だぞ!(笑)

私は君たちをいつも見ている。

私は君たちがどんな人かを知り尽くしている。

君たちはみな、私が今話したことを覚えて、研究し、理解し、他の人に詳しく説明できるようになるだろう。

そして君たちの人生は、とても幸せで有意義なものとなるであろうことを、この私が保証する!

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