東西の古典を、きわめて平易な現代語に訳出する試みです。
意によって大幅に構成を改編し、読みやすくするために潤色を施しています。

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超訳【金剛経】

第17話 自分はいない、他人もいない(究竟無我分)

2008.11.30

そこまで聞いたスブーティが突っ込みます。

「・・・先生、すみませんが話を戻させてください。
もう一度おたずねします。
我々はいったい、どのように日々を過ごすべきなのでしょうか?」

ブッダは答えました。
「うむ。
我々は、このような気持ちを持って日々を過ごすべきなのだ。
「この世に生きとし生けるもののすべてを「悩みなき永遠の平安」の境地に連れて行くこと。
それこそが、私の使命なのだ! 
そして私がそうするとしても、実際には、誰も、何も、どこにも連れてなど行かれやしないのだ!」
とな。
何故かといえば、「生きているもの」が存在する、などと考えてしまうようでは、その人は「立派な人になることを目指す人」とは呼べないからだ。
「自分」がいる、「他人」がいる、「生きているもの」がいる、「個体」が存在する、などと思い込むようでは、到底「立派な人になることを目指す人」とは呼べないからだ。
わかるか、スブーティ?
つまり、「立派な人になることを目指す人」など、存在しないのだ。
スブーティ、私はディーパンカラ師匠から何かを得たと思うか?」

スブーティ:「・・・いいえ、先生。
先ほども申し上げましたが、先生がディーパンカラ師匠から「何かを受け取る」などということがあるわけがありません。」

ブッダ:「わっはっは! スブーティ、その通りだ。
私が師匠から受け取ったものなど、何もありはしないのだ。
もしも私が「私は師匠から得るものがあった」などというカンチガイをするようなヤツだったなら、ディーパンカラ師匠は私に対して「遠い未来に、シャカという名の仏となるだろう」などという予言をされなかっただろう。
しかし私はもちろん、そんなカンチガイをするわけもない。
だから師匠は「お前は遠い未来に、シャカという名の仏となるだろう」と言い切ることができたのだ。
スブーティよ、この際だからハッキリさせておこうと思うのだが、私は「真実と一体化した者」という意味で「「如来」と呼ばれることがあるよな?
「如来」とはつまり「あるがまま」ということだ。
そしてそれは「永遠の真実」の別名でもあるのだ。
わかるか?
今のこの状態に、もはや何も付け加えることなどできないし、その必要もないのだよ。
「何も足さない、何も引かない」、これこそが最高の真理なのだ!
だから私が「究極の悟りをゲットした」などと言う人がいたなら、そいつはウソつきだということになるのだ。
そいつはとんでもないウソを言いふらし、私をバカにしていることになるのだ!
私が何かを「ゲットする」などということがあるわけがない。
いいか、スブーティ、「如来」によって示されるものに真実はひとつもなく、また虚妄もひとつもないのだ。
つまり、「全ての存在は、そのまま仏である」ということだ。
そしてそれは、「全ての存在は、仏でもなんでもない」ということでもあるのだ。
だからこそ、「全ての存在」たり得るのだ!
例えばスブーティ、「身体の大きな人がいる」というようなものだ。」

スブーティ:「そうですとも。
「身体の大きな人」などといったところで、実は「身体」など存在しやしないのです。
それを「身体が大きい」と呼ぶのです。」

ブッダ:「そのとおりだよ、スブーティ。
もしも「立派な人になることを目指す人」が、「この世に生きとし生けるもののすべてを「悩みなき永遠の平安」の境地に連れて行くことが、私の使命なのだ!」などと言ったとしたなら、その人は到底「立派な人になることを目指す人」とは呼べない。 
なぁ、スブーティ。
「立派な人になることを目指す人」とは、いったいどんなものなのだろうね?」

スブーティ:「先生、そんなものはないのです。
「立派な人になることを目指す人」なんて、どこにもいやしないのです。」

ブッダ:「スブーティ、何度も言うが、「生き物」は実は「生き物」ではないのだ。
「自分」など存在しない、「他人」も存在しない、「生きているもの」は存在しない、「個体」も存在しない!
私が将来、「この世界をあるべき姿にするだろう」などという人は、「立派な人になることを目指す人」とは呼べない。
スブーティ、「あるべき姿」とは、「する」とか「しない」とかを離れたものだからだ。

・・・ちょっとクドかったかも知れないが、スブーティ、そんなわけだから、「主観と客観」を完全に一致させることができて初めて「立派な人」と呼ばれる資格が得られるということになるのだよ。」

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