東西の古典を、きわめて平易な現代語に訳出する試みです。
意によって大幅に構成を改編し、読みやすくするために潤色を施しています。

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超訳【夢中問答】

第3話 まずは性根を入れかえろ!

2009.8.21

足利直義:「しかし和尚、みなの目的はつまるところ「幸せになる」ことです。

そしてその目的を実現するために、あれこれと手段を講じて努力しているわけなのですが、その追求の仕方にも良し悪しがあるとおっしゃるのですか?」

夢窓国師:「結果をもたらす原因となるものを、我らは「業(ごう)」と呼んでおる。
つまり、目的を追求して実施する行為は、ことごとく「業」なのじゃ。

日常でもよく言うじゃろう? 「作業する」と。

「業」を作れば、その延長線上に必ずなんらかの「果実」が結ばれるのじゃ。
「よい業」を作れば「よい結果」、「悪い業」を作れば「悪い結果」がもたらされる。

それでは「よい結果」につながりそうな作業をすればよいということになるのじゃが、ここに大きな落とし穴がある。

まず、「金持ちになりたい」とか「強大な権力を握りたい」とかいうたぐいの俗物根性にとらわれながら実施する行為は、いかに体裁よく飾りつけたところで、ことごとく「悪い作業」となる。

逆にそういう根性を持たないで実施する行為は、ことごとく「よい作業」となるのじゃ。

行為・作業そのものに良し悪しがあるのではない。
実施する者の根性に、良し悪しがあるのじゃ。

仏教では、これを次の4つに分類しておる。

  1. ただ「悪い根性」だけ。これは単なるバカモノや外道のことじゃな。
  2. ただ「よい根性」だけ。これは自分ひとりの幸せだけを願う者のことじゃ。
  3. 時と場合に応じて「よい根性」だったり「悪い根性」だったりする。これは他人を救うことにしか興味がない者のことじゃ。
  4. 「よい根性」でもなく「悪い根性」でもない。これこそが「仏」の心じゃ!

そして、ズバリ「良し悪し」ということで分けるなら、バカモノや外道だけでなく、最初の3つは全て「悪」なのじゃ。

「自分ひとりの幸せだけを願う者」とは、つまり「言われたことを忠実に実行するだけ」、または「誰の言うことにも耳を貸さない」という二つのやり方をする者たちのことなのじゃが、こいつらは「金や権力には興味がない」などといったところで、結局のところ「死にたくない! でも、生きているのも面倒くさい!」とか、「どこか遠くにあるパラダイスに生まれ変わりたい!」とか考えるばっかりじゃ。

「他人を救うことにしか興味がない者」は、「自我」への執着がないだけまだマシなのじゃが、それでもまだ物事をあれこれといじりまわす心が残っておるので究極のところではない。

それら全てが消滅した状態で実施するのでなければ、結局のところ悪い結果しか生まれないのじゃ!

悲華経というテキストに、このような話が載っておる。

遠い遠い遥かな昔、「アランナ(心に葛藤なし)」と名乗る強大な王が君臨する世界があった。

王は膨大な財産と1000人のこどもを持っていた。

彼が内政を取り仕切らせていた大臣に「宝海」という男がいたのだが、彼の息子の中から究極の悟りを開いて仏となるものが現れ、「宝蔵如来」と名乗った。

王様はたいそう喜び、広大な園林に黄金を敷き詰めたり七種の宝石でできたタワーを立てたりと、あれやこれやと飾り立てて如来に奉った。

そして園内に10万本のロウソクを立てて火を灯し、自分の頭のテッペンと両ヒザに火のついたロウソクを立て、両手にも火のついたロウソクを握り締めると、徹夜でお祭りを繰り広げた。

そして王様はそれを3ヶ月続け、続いて8万4千人の家来たちも同じように3ヶ月連続でそれを実施したのだが、ある晩、宝海大臣は、王様や多勢の王子たちの顔が、イノシシやゾウ、ライオンやキツネ、サルなどに変化して全身血まみれとなっている夢を見た。

わずかに人間の姿のままの者もいたのだが、彼らはみな、ほとんど壊れかかったボロ車に乗っていた。

夢から覚めた大臣が速攻で宝蔵如来に報告したところ、如来はこのように解説した。

「そのケダモノの姿をした者たちは、みな解脱からは程遠い。
なぜならば、彼らが求めているものは解脱ではなく、この世における権力であったり、財力であったり、超能力であったりするからだ。
また、人間の姿をした者たちは、そういったこの世における欲望を絶ってはいるものの、みな自分さえよければいいという考えを捨て切れていないのだ。
彼らが乗っているような車では、とても究極の目的地まで到達できまい。」

大臣はビックリして王様に報告するとこう言った。

「王様! あなたはよかれと思って如来への供養を実施しているのだと思いますが、どうもやり方が間違っているようです。あなた、いったいどんなつもりで、この供養を実施しているのですか? ちゃんと究極の悟りを求める気持ちで実施していますか!?」

王様は答えた。

「うーん・・・ 究極の悟りを求めたいとは思うんだが、なんだかちょっと難しそうじゃない?
だから、とりあえずは目に見えるような成果が現れるように祈っているんだけど。」

それを聞くと、大臣は叱った。

「王様、そんなんじゃ、やらないほうがマシです! 究極の悟りは、全然難しくも面倒でもありませんよ! よく考えてみてください!!」

王様はその晩、宮殿の自分の部屋に戻ると、静かに自分の考えを整理した。

すると、途端に「究極の悟りは難しくも面倒でもない」ということがハッキリしたのだ。

そして、王子たちや家来たちもまたそれに習って性根を入れかえた。

翌朝、王様たちは如来のもとに行くと、こう宣言した。

「仏様! 今こそ我らが蓄積した功徳の数々を、すべて究極の真実に向かって解放したいと思います!」

それを聞いた宝蔵如来は喜んで、次のような予言をしたとのことだ。

「大王、よくやった! あなたは今の宇宙が消滅したあとに現れる安楽世界という宇宙において仏となるだろう。そして「阿弥陀如来」と名乗りなさい!」

多勢の王子たちも、みな同様の予言を受けた。

「おまえは「観音」と名乗れ!」「おまえは「勢至」と名乗れ!」、と。

この王様たちはみな、途轍もなく膨大な「よいこと」をしたつもりだったのじゃが、危うくイマイチな結果を招くところだった。

それをギリギリで思い直したおかげで、全員が一気に仏となることができたというわけじゃ。

いうまでもなく今は末世もいいところじゃが、それでもこの王様たちのように性根を入れかえることができるなら、同じようによい結果をもたらすことができるようになるじゃろう。

「一気に仏になる」とまではいかなくとも、「死後パラダイスに生まれ変わる」ことぐらいは楽勝じゃ。

そして生きている間も、「災い」は向こうから避けてとおり、地位や財産なども求めるまでもなく向こうからやってくることじゃろう。 」

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