東西の古典を、きわめて平易な現代語に訳出する試みです。
意によって大幅に構成を改編し、読みやすくするために潤色を施しています。

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超訳【夢中問答】

第19話 優秀な人も「魔」に憑りつかれるのか?

2011.1.10

足利直義:「しかし和尚様、デキの悪い連中がグレて「魔道」に入るというのはよくわかりますが、智慧に優れて才能あふれる優秀な人たちまで「魔道」に入ってしまうというのは、これはいったい、どういうわけなのでしょうか?」

夢窓国師:「たとえば、戦争でもビジネスでもなんでもよいが、大きな功績をあげた人がいたとして、その人がそれを鼻にかけて調子に乗った挙句、やり過ぎて罰を受けることになったとしたら、それはその人の功績のせいではない。

罰を受けることになったのは、そいつが調子に乗りすぎたせいじゃ。

仏教でもそれと同じことが言える。

正しく修行を続けると、思考や行動が人並みはずれてイケイケになってくるのじゃが、もしもその人がそれを鼻にかけて調子に乗るようなことがあれば、「魔道」一直線となるのじゃ。

そういう例は天台宗・禅宗の区別なく、昔からたくさんある。

極楽往生を目的とする浄土宗でも、「魔往生」というのがある。

どれもみな、仏教が悪いわけではなく、ちょっと人よりもイケているということを鼻にかけて調子に乗ったからバチが当たったのじゃ。

そしてさらに調子に乗って「自分が一番正しい」とばかりに人の悪口ばかり言うようになったとしたなら、もう「魔道」に入るまでもなく、地獄に直行じゃ!

浄業障経は、「仏教修行の6原則(六波羅蜜)がかえって仏教修行の障害となってしまうことがある」と警告している。

たとえば、「布施」の修行中の人は自分以外の人がケチに見えてムカつくようになり、「ルール厳守」の修行中の人は自分以外の人がルーズに見えて腹が立つようになり、「精神統一」の修行中の人は自分以外の人が注意力散漫に見えてウザがるようになり、「智慧」の修行中の人は自分以外の人がバカに見えて見下すようになる。

これら全ては、6原則が魔業だからではなく、「自分が、自分が」という意識が過剰だから陥る状態じゃ。

「人のため世のため」という立派な志を発して原則に沿って修行しているのにもかかわらず、「自我」という思いに執着したが最後、全てが魔業となってしまう。

仏教ですらそうなのじゃ。

ましてや、世俗での成功を目的として超能力・霊能力を得ようなどという連中など、まるでお話にならないということはわかるよな?

今述べたような気持ちが起こることを「内魔」と呼ぶ。

そしてその発生した「内魔」につけこんで、「外魔」があれこれとちょっかいを出しにくるのじゃ。

「外魔」のちょっかいは実に巧妙なもので、一見その人自身の能力であるように見えるのが常じゃ。

そしてその人はすっかりカンチガイしちまって、「魔道」一直線となるというわけじゃ。」

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