東西の古典を、きわめて平易な現代語に訳出する試みです。
意によって大幅に構成を改編し、読みやすくするために潤色を施しています。

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超訳【夢中問答】

第22話 悪魔と戦う方法

2009.2.24(伝心法要の段は2008.11.24)

足利直義:「しかし和尚様・・・
もしもそんな恐ろしい悪魔のしわざが自分の身に起こったとしたならば、いったいどうやって対処したらよいのでしょうか?」

夢窓国師:「わははっ、なにをビビっとるんじゃ。(笑)
悪魔と戦う方法なら、山盛り伝えられているから心配するな!

例えば、こんなのはどうじゃ。

「究極の真実」というものは、既に全ての生き物に備わっている。
それは既に完成しており、それぞれに優劣なく完全に平等である。
そしてそれは、今も昔も変わらないのだ。

ということがちゃんと理解できておれば、たまたま人よりもイケているように思えることがあったとしても、そんなものは単なるカンチガイであることがわかるハズじゃ。

ワシの先輩は、かつてこんなことを言った。

「ニルヴァーナ(涅槃)の境地だって? そんなもの三つにぶった切ってやるぜ!」

わかるか?

自分のことを徹底的に信じることができるようなヤツであれば、ブッダが駆使したような超能力に憧れることなどないし、肥溜めでうごめくウジ虫が取るにならないものだと思うこともないのじゃ。

もしも、身体に修行完成者に特有の兆候が現れたり、後頭部が光りだしたりしたとしても、全然おどろいたり感心したりする必要はない。

・・・というような気持ちを持ってみろ。
心の中の悪魔も外の悪魔も、まるで手が出せなくなるハズじゃから。

昔、中国の道樹禅師が、弟子たちにこんな体験談をしたそうじゃ。

ワシが昔、三峰山にこもって修行していた時のことじゃが、なんだか見たことのない服を身にまとった怪人が、ワシの庵のまわりをしきりとウロつくようになったことがある。

そいつは、ある時は仏や菩薩のような姿になり、また天人や仙人のような姿になり、光ったり、聞いたこともないような言葉でしゃべったり、実に色々な嫌がらせを仕掛けてきた。
そしてそれは、なんと十年間も続いたのじゃが、そのうちにいなくなってしまった。

この悪魔はワシの修行のジャマをするためにアレコレとやったわけなのじゃが、ワシが全く相手にしなかったため、とうとうあきらめたというワケじゃ。

悪魔の嫌がらせの種類は、果てしないように見えても実際には限りがある。
ワシが「スルーする」ことには限りがない。

だから悪魔はワシに勝つことができなかったのじゃ。」

わかるか?
これこそが、まさに「降魔の秘術」なのじゃ。

悪魔に襲われた時ばかりでなく、どんなにウハウハな時もガッカリな時も、この道樹禅師のような態度でいることができたなら、修行は放っておいても完成することじゃろう。

ダルマ大師が、「あれこれとキッカケを求めてウロつくな! クヨクヨと悩むのもやめろ! 城壁のようにキッパリと直立不動の精神を持て! それだけで充分だ。」とおっしゃったのは、つまりこのことなのじゃ。

これは日常生活に役立つばかりでない。
さぁ、「いよいよ死ぬ」という時においても使えるワザなのじゃ。

「伝心法要」の中で、黄檗禅師はこんな「死に方」指南をしていらっしゃる。

聞け、ボンクラども!
オマエらに、くたばる時の心構えってヤツを教えてやるぜ。

本当のことをいうと、「心」にはこれといって決まった形はないのだ。
始まることはないし、終わることもない。

だからオマエらは生まれなかったし、死ぬこともないのだ。
心の内も外も実は全く同じものだし、何ごとも万事円満だ。

オマエらは、とっくに現在も過去も未来も超えているのだ。
何を今さらジタバタすることがあるものか!

だからもし目の前に神や仏が現れて、「お迎えにきました」などと言われたからといって、ホイホイとついて行こうとするんじゃないぞ!

逆に何やら恐ろしげなものがあたり一面に湧き出てきても、全然ビビる必要はない。

余計なことを思い悩む必要はないぞ。
もはやオマエらは、この世界とひとつになっているのだ!

オマエらは既に、充分過ぎるほど自由なのだ。
そこんとこ、ヨロシク!!

(原文)
凡人臨欲終時、但觀五蘊皆空四大無我。
真心無相不去不來。
生時性亦不來、死時性亦不去。
湛然圓寂心境一如。
但能如是、直下頓了。
不為三世所拘繫。
便是出世人也、切不得有分毫趣向。
若見善相諸佛來迎及種種現前。亦無心隨去。
若見惡相種種現前、亦無心怖畏。
但自忘心、同於法界。
便得自在、此即是要節也。

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