東西の古典を、きわめて平易な現代語に訳出する試みです。
意によって大幅に構成を改編し、読みやすくするために潤色を施しています。

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超訳【夢中問答】

第25話 小賢しいのはダメ!

2011.9.20

足利直義:「しかし、和尚はそう仰いますけれども・・・

例えば外道たちのようなのは「智慧」などといってみたところで最初から間違っているわけなので、それは当然ジャマというかダメなんだろうとは思いますが、華厳経にあるように正しいやり方で段階を踏んで修行することで得られる智慧もダメなんでしょうか?」

夢窓国師:「仏教典には「智慧なんかがあるおかげで、かえって混乱してしまう」という言葉が出てくる。

これはたとえば、お灸をすえるのは病気を治すために必要なことじゃが、治ってしまってからのお灸は単に苦痛なだけというようなもんじゃ。

華厳経で滔々と述べられておる「十地(じっち)」とは、菩薩修行の段階を10レベルにわけて具体的に示すものなのじゃが、そこには、「それまでに獲得した知識や境地に間違いがあることに気がついたとき、ひとつ上の段階へ登ったといえる」と書かれておる。

つまり、それまでに獲得した知識や境地を否定することを通じてこそ、ひとつ上の段階へ登れるのだということじゃ。

「あっ、何やってんだオレ!? 今まであんなしょーもないものを最高だと思って信じていたなんて・・・ バカ! 今までのオレのバカ!!」 という気持ちになったとしたら、それは菩薩レベルがひとつアップしたということなのじゃ。

次々に直前の知識や境地を否定してゆき、遂には仏とほぼイコールとなる「等覚」の境地に到って智慧は完成の領域に達するが、まだ「無明」の域を脱しておらず、最後にそれまでに得た「智慧」を「無明」と同時に振り捨てることで最終境地である「妙覚」の境地に到ることができる。

これを「妙覚智断」と呼ぶのじゃが、それが本当にできた時には、それまでの修行過程のことはもちろん、最後に「妙覚智断」を実施したことすらも忘れてしまう。

そして、そうなった時はじめて、直接見ることのできない奥深いところに元から持っていた「本物の智慧」とひとつになることができるのじゃ。

その境地からしてみれば、様々な知識やそれを得るための理屈や経験は、全て本来の目的ではなく「手段」に過ぎないということになり、黄檗禅師はこれを指して「妙覚も尚これ化城なり」と説いたとか。

「化城(けじょう)」とは法華経で語られる「かりそめの城」のことで、根性なしの一般ピープルを「騙してでも」本来の目的地に向かわせるために仏がマジックで出現させる福利厚生施設のことなのじゃが、こんな話を聞くと、とにかく手っ取り早く悟りを得たいと考えている禅宗の坊主どもは「やっぱりオレたちのやり方が一番だ!」とばかりに調子づき、知識を重視するそれ以外の宗派の坊主どもは「オレたちの教学システムをコケにするのか!?」とばかりに激怒することじゃろう。

これらは皆、言葉尻ばっかりにとらわれて、「真実の智慧」を理解しようとしないからそうなるのじゃ。

「真実の智慧」が発揮できている人は、決してこんなことでプンプン怒ったりはしないし、調子づいて浮かれたりすることもない。

「賢い」から偉い、という考えは捨てなさい!

「バカ」だからダメ、という考えも捨てなさい!」

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