東西の古典を、きわめて平易な現代語に訳出する試みです。
意によって大幅に構成を改編し、読みやすくするために潤色を施しています。

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超訳【夢中問答】

第29話 妄想って何?

2007.9.9


足利直義:「・・・和尚。
先程から貴方は「妄想はダメだ!ダメだ!!」と繰り返し強調されていますが、そもそも「妄想」って何でしたっけ?」

夢窓国師:「なんじゃ、そんなところから説明せにゃならんのかいな・・・

いいか、よく聴きなさい。

「天国と地獄は全然違うものだよね!」とか、「迷いと悟りが同じもののハズがないよ!そこら辺のボンクラと賢い人を比べたら全然違うわけだし。」などと考える。

これがすなわち「妄想」じゃ。

「いやいや、ボンクラも賢い人も平等ですとも!私は差別しませんよ。」とか、「世の中の全ては尊いのです。キレイとかキタナイとか、私はそんなことは気にしません!」などと考える。

これもまた、同じぐらい「妄想」じゃ。

「ホトケの教えには、その観点やレベルに応じて色々な種類があるのです。「大乗」「小乗」の別は言うまでもなく、「権教」と「実教」、「顕教」と「密教」、「禅宗」と「天台宗」など、実に色々です。」などと考える。

なんとまぁ、恐ろしいまでの「妄想」ぶりじゃ。

「喝っ!ホトケの教えに、そんなチマチマした区分などあるものか!真実はひとつ!全ての教えは平等なのだ!どうしてそこに優劣などつけられようか!!」などと考える。

「妄想」もここまでくると逆にたいしたモンじゃ。

「真実への道というものは、何だかよくわからないけど、きっと今の日常生活とは離れた、どこか遠いところにあるのに違いない。」などと考える。

よくありがちな「妄想」じゃ。

「いやいや、そうではないんだよ。行住坐臥、見聞覚知、つまりこの何でもない日常生活こそが、真実への道に他ならないのさ。」などと考える。

これまた、よくありがちな「妄想」じゃ。

「ああアリガタイことだなぁ。ホトケさまの教えは永遠に不滅だ。つまり、あなたも私も、万物も、また永遠に不滅なのだ。」などと考える。

これはボンクラ野郎にありがちな「妄想」じゃ。

「いえいえ、そうではないのです。御覧なさい、全ては時とともに移ろいゆくのです。貴方は「諸行無常」という言葉をご存じないのですか?」などと考える。

これは自己救済だけを目的とする坊主にありがちな「妄想」じゃ。

「実存を否定するなよ!だって全ては歴然と存在しているじゃないか!今、ここに現に存在しているオレ様を、オマエは否定できるのか?そんなことはさせないぜ!!」などと考える。

また逆に、
「なに言ってんだよ!全ては虚しいんだよ!虚無だよ虚無!!オレもオマエも、今ここでこうしていることに何の意味もありゃしないんだ!努力なんかしたってムダムダムダ!どうせ何も変わりゃしないんだから!!」などと考える。

この2つは外道にありがちな「妄想」じゃ。

「これこれ、なにをムキになっているのですか。世の中の全てはマボロシだということをよく理解しなさい。よいですか?あらゆるものの本質は「空」なのです。
有るのではありません。
無いのでもありません。
有りつつ無いのでもありません。
そして有るとか無いとかを離れているのでもないのです。
これこそが「中道」です。
これこそ究極の境地!間違いない!!」などと考える。

一見もっともらしいが、これこそが菩薩たちが抱いている「妄想」なのじゃ。

「経典には全てが書いてある。というか、文字や言葉がなかったら、何も伝えることなどできやしないだろ?だからもう一度言うぞ。ここには全てがある!!」などと考える。

これは頭デッカチな連中で構成される某派閥の坊主たちが固く信じている「妄想」じゃ。

「なに言ってんだか。(笑)
オマエら「教外別伝」って聞いたことないのかよ?
真実は文字や言葉なんかじゃ表せやしないんだよ。
そんなカスみたいなテキストを丸暗記したところで、何の役にも立ちゃしねぇよ!まぁ、やりたいなら死ぬまでやってればいいさ。
オレは座禅が忙しいんでな。アバヨ!!」などと考える。

これは禅宗の坊主たちのほとんどが陥っている「妄想」じゃ・・・

「な、なるほど・・・わかったぞ!
全ては妄想、あれもこれも皆「妄想」なんですね?!
あなたも妄想、私も妄想、全部妄想!
ヤッター!!」などと考える。

これこそ最大の「妄想」じゃ!

かつて無業国師は、どんな質問に対してもただ一言、
「いらんこと考えるな!(=莫妄想:まくもうぞう)」と答えたそうじゃ。

この一言が何を意味するか。

それさえ理会できたなら、どんなヤツでも、その瞬間から潜在能力全開じゃよ。 」

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