東西の古典を、きわめて平易な現代語に訳出する試みです。
意によって大幅に構成を改編し、読みやすくするために潤色を施しています。
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別訳【西国立志編】

第九編自序

2007.2.17

 
ある人が私に向かってこんなことを言った。
 
「先生、こりゃまたムッチャ素晴らしい本ですね!この本を読めば、ヨーロッパのことが全てわかっちまうんですよね!?」
 
チガウ!全然ちがう!
この本に書いてあることは、あくまでも一個人の意見に過ぎないのだ。
 
そんなものを取り上げて「これこそ全てだ!」などと言うのは、思い違いもはなはだしいと言わざるを得ない。
 
私がこの本を翻訳しようと思ったのは、皆さんにそんな勘違いをさせるためではないんだよ。
 
だいたいこの世の中、毎日めまぐるしくいろんな出来事が起こって尽きることがない。
 
ちょっと前の人が「これは白だね」と言っていたことが、今日になってみると「いや、これは黒でしょう」となるなんてことはザラにあるだろう?
 
だから今この瞬間「よい」とされているからといって、これから先もずっと「よい」などと思ってはいけない。
 
世界中の人が「NO!」と言った中で、ただ一人だけ主張を曲げなかったために散々ヒドイ目にあわされたにもかかわらず、その後にその名が燦然と輝くことになったガリレオの例を見るがいい!
 
世間で言われていることが常に正しくて、ちょっと変わったオッサンの言うことなんて取るに足りないなんて、どうして決めつけられるんだ?
 
ソクラテスを見ろ。
当時の大衆に異端視されて処刑されてしまったが、今や聖人としてあがめられているではないか!
 
だから何千何万もの意見や情報を集めてきたところで、それが「全てだ」なんてとてもではないけど、言えないのだよ。
 
で、何?
このちっぽけな本が「全て」だって?
とんでもない、何万分の一にだってなりゃしないよ。
 
私が元々英語で書かれたこの本を日本語に翻訳しようと思ったのはね、すっかり島国根性が染みついちまったこの国の人たちに外国の事例に触れる習慣をつけてもらうことを通じて、思い上がった心を改めてもらいたかったからなんだよ。
 
で、いろいろな意見をもった人たちをたくさん作ることによって、ちょっと声が大きいだけの人の意見に皆でワーっと引きずられて行っちまうようなパターンをやめさせたかったというわけ。
 
だから、頼むからこの本を読んだだけで「よっしゃ、ヨーロッパのことは全部わかったぞ!」なんて言わないでおくれ。
 
靴をはいたまま足をかいたところで、足のかゆみはおさまりはしないのだから。
 
  (続く)

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