東西の古典を、きわめて平易な現代語に訳出する試みです。
意によって大幅に構成を改編し、読みやすくするために潤色を施しています。

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超訳【維摩経】

第7話 カッチャーナ

2006.12.3

「説法第一」の名演説者プールナ(富楼那尊者)に断られた世尊は、どんなに難解な教義でも一発で理解してしまう大秀才カッチャーナ(迦旃延尊者)に言いました。

「カッチャーナ!お前なら行ってくれるよな?」

カッチャーナは、静かにかぶりを振ると言いました。

「申しわけありません。それは私にも無理です・・・
昔あなたが短期講座で仏教のポイントをかいつまんで話されたことがあったでしょう?
あの時私は、初心者にも理解しやすいようにと思って、それぞれのポイントについて逐語解説をやったんですよ。
「これこれは「無常」についての説明である」
「これこれは「苦」についての説明である」
といった感じで。
同じように「空」「無我」「寂滅」についても解説しました。
そこへ維摩氏がやってきて、こんなことを言ったのです。
「違う違う!そんな解説の仕方ではダメじゃ!!
お前さんの解説は、まだ「生滅」というものにとらわれている。
いいか?よく聴きなされ。
あらゆるものごとは、生まれもしないし滅びもしない。それが「無常」の正体じゃ。
人間の様々な精神作用の本質は「空」なのであって、それが起こるということはありえない。それが「苦」の正体じゃ。
ありとあらゆるものごとは、つきつめれば実在しないということになる。それが「空」の正体じゃ。
「無我」と「我」とは、実は全く同じものである。それが「無我」の正体じゃ。
「法」は本来燃えることもなく、消えることもない。それが「寂滅」の正体じゃ。
どうじゃ、おわかりかな?」
その言葉を聴いた受講生たちは、全員たちどころに解脱してしまいました。
つまり私は、オイシイところを全部、維摩氏に持っていかれてしまったわけです。
そういうわけですので、私には無理です。
本当に申しわけありません・・・」

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