東西の古典を、きわめて平易な現代語に訳出する試みです。
意によって大幅に構成を改編し、読みやすくするために潤色を施しています。

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超訳【維摩経】

第8話 アニルッダ

2006.12.3

「論義第一」の大秀才カッチャーナ(迦旃延尊者)に断られた世尊は、授業中に居眠りしたことを過剰反省して「不眠の行」を敢行し、失明してしまったことと引き換えに世の中の全てのことが見通せる「心眼」を得た超能力者アニルッダ(阿那律尊者)に言いました。

「アニルッダ!頼むよ、ホントに・・・」

アニルッダは、きっぱりと言いました。

「いいえ、私には行けません。
昔私がぶらぶらと散歩していた時のことですが、厳浄という名の古代神の王様(梵王)が、1万人の子分(梵天)を引き連れてやってくるのに出くわしました。
厳浄は私に気づくとやってきてこう尋ねました。
「あなたのその「心眼」は、いったいどれぐらいのものを見ることができるのでしょうか?」
私は得意げに即答しました。
「そりゃもう、この世界の全て(三千大千世界)を、この手のひらに乗せたマンゴーのように楽勝で見ることができますよ。」
その時です。維摩がやってきたのは。
彼は絶妙のタイミングで登場すると、すかさずチャチャを入れてきました。
「はい、質問です。
あなたが今「見ることができる」といったのは、「作られたもの」ですか?それとも「作られないもの」ですか?
もしも「作られたもの」を見ることができる、というのであれば、それは「心眼」なんていう有難いもんじゃない。外道たちが人をたぶらかすために駆使するマジックと同レベルじゃ!
そうではないと言うのであれば、それは「作られないもの」を見ることができるということになるが、「作られないもの」はすなわち「見ることができない」もののハズ。
おかしいじゃないか!何とか言ってみろ、ホレホレ!!」
・・・私が何も言えずにうつむいていると、厳浄は維摩に質問しました。
「それでは世の中で「心眼」を持っている人などいないということなのでしょうか?」
維摩は答えました。
「いや、いるとも。それは世の中でたった一人だけじゃ。
あの世尊(ブッダ)だけがそれを持っている。
彼は常にありとあらゆるものを見ておられるが、その見方は、「有る」とか「無い」とかいったレベルを遥かに超越しておられるのじゃ!」
それを聞いた厳浄梵王と子分たちは、「よし、オレ達も頑張るぞ!!」と修行への決意を新たにし、維摩の足にすがりついたと思った次の瞬間には消えうせていたのです。
変幻自在の超能力を持ったインドの古代神である梵天、そんな梵天を1万も従えている梵王である厳浄。
そんな彼らが足元にひれ伏すようなヤツのところへなんて、とてもではありませんが、恐ろしくて行けません・・・」

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