東西の古典を、きわめて平易な現代語に訳出する試みです。
意によって大幅に構成を改編し、読みやすくするために潤色を施しています。

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超訳【維摩経】

第9話 ウパーリ

2006.12.4

「天眼第一」の超能力者アニルッダ(阿那律尊者)に断られた世尊は、元理髪師(床屋さん)でありながら、大変律儀な性格で皆の尊敬を集めていた「The rule」ことウパーリ(優波離尊者)に言いました。

「ウパーリ!まさか、お前は断らないよな?」

ウパーリは、申し訳なさそうに言いました。

「それが・・・世尊よ、誠に申し上げにくいのですが、ちょっと私にも無理なんです・・・
これは他人に言うのは初めてなので、ここだけの話にしていただきたいのですが、以前、○○とララの2人が私のところにやってきてこう告白したことがあったのです。
「ウパーリさん・・・実は我ら2人は、重大なルール違反をしてしまったのです。しかも、そのことを恥じるあまり、誰にも、もちろん先生(ブッダのこと)にも言えずに、ついに今まできてしまいました。
苦しくてこの胸はもう張り裂けそうです。
お願いです。どうか我々をこの苦境から救ってください!!」
で、私はホイきた!とばかりに私が中心となって制定した教団の規則について解説をしました。
その時です。維摩さんがやってきたのは。
彼は開口一番、こう言いました。
「バカもん!何をやっとるんじゃ、お前は!!
お前さんが今やったことは、この2人を混乱させて罪を重くすることはあっても、そこから救うことには全くなっていないぞ!!
そんなんなら、やらない方がまだマシじゃ!!
いいか?よく聞きなさい。
例えば、罪に「けがれた」心というものがあったとしよう。
もしその者が解脱して「清らかな心」になることができたとしたら、その心の「けがれ」はいったいどこへいったことになるのじゃ?
言ってみろ!オラオラオラ!!」
私はなんとか答えをしぼり出しました。
「い、いや、その・・・どこにもいっていません。」
維摩はそれを聞くと、さらに畳み掛けてきました。
「じゃろ?「けがれた心」と「けがれない心」、その2つの質量はまったく同一なのじゃよ。
言い方を変えるなら、つまるところ「けがれ」は心の中に生まれもしなかったし、滅することもなかったということじゃ。
さらに言うなら、全ての人々の心の「本性」は、無垢だということになるのじゃ。
「罪」とは何か?それは「妄想」を抱くことじゃ。
「罪」とは何か?それは「勘違い野郎」になることじゃ。
独立した「自己」というものが実在する、と考えることは、すなわち「妄想」であり「勘違い」じゃ。
しかし、独立した「自己」というものは実在しない、と考えることも、同じくらい「妄想」であり「勘違い」なのじゃ。
わかるかな?
独立した「自己」というものの有無にとらわれない。
その時初めて解脱となり、罪は消えうせるのじゃ。
そのことをしっかりと理解すること、それを「ルールを守る」と呼ぶのじゃ。
わかったか!!」
それを聞いた2人は言いました。
「おお、なんと素晴らしい!ウパーリなんかまるで「めじゃない」ですね!!」
2人が晴れ晴れとして帰っていくのを見送りながら、私はもうガックリでした・・・
そんな私が、彼の見舞いになんていけるわけがないでしょう!」

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