東西の古典を、きわめて平易な現代語に訳出する試みです。
意によって大幅に構成を改編し、読みやすくするために潤色を施しています。

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超訳【維摩経】

第10話 ラーフラ

2006.12.5

あろうことか、「持律第一」のマジメ人間ウパーリ(優波離尊者)にまで断られてしまった世尊は、ついに自らの一人息子ラーフラ(羅喉羅)に命令します。
「ラーフラ!お前が行きなさい!!」

ラーフラは言いました。

「父さん・・・いかに偉大なるあなたの頼みとはいえ、そればっかりはカンベンしてください。
理由もちゃんとあります。まぁ聞いてください。
ある時、ヴァイシャリーの街に住む大金持ちの息子たちがぞろぞろと私のところにやってくると、こんな質問をしたのです。
「ラーフラさん、あなたはあの超カリスマであるブッダの一人息子ですよね?
父上のブッダがそうであったように、あなたもまたそのまま家督を継いだなら、全ての世界を支配する王様(転輪王)になれる資格を持っていたハズです。
なのにあなたは父上同様に、それを投げ捨てて出家されました。
いったい「出家すること」には、どんなメリットがあるのでしょうか?」
もちろん私は、嬉々として出家することのメリットについて語りましたとも。
まさにその時です。維摩さんがやってきたのは。
あの人は言いました。
「はーい、ストップ!ダメダメ!そんなこと言っちゃダメでしょ!!
だって出家することにメリットなんてないんだから。
もしも「出家すること」が実在するものであるなら、あるいはメリット・デメリットなどということがあるかも知れないが、「出家すること」はそんなもんじゃないんじゃ。
言葉を変えて言うなら、「出家する」という行為は実在しない、ということじゃよ。
「出家した人」はいるかも知れないが、「出家する」という行為そのものをとらえることは、誰にもできないのじゃ。
とらえることのできないものに、色々な事柄がくっつくわけがない。
故に「メリット」とか「デメリット」とかについて語ることはできないのじゃ。
では「出家した人」はどうなるのか?
ひとつ教えて進ぜよう。
「出家した人」には「自我」が無い。
「出家した人」には「自我以外のもの」も無い。
「出家した人」には「自我でもなく自我以外のものでもない」ものも無い。
その境地を「涅槃」と呼ぶ。
ありとあらゆる「概念」を超越することで心の安定を得ている状態のことじゃ。
「あなた」とか「わたし」とかの区別を超え、「善」も「悪」も超越する。
それこそがまさに「出家」ということなのじゃ。
それができたなら「他人に迷惑をかけない」などという消極的なレベルではなく、全ての人々の悩みを救い、あらゆる外道・悪魔を打ち砕くことができるようになるハズじゃ!!
諸君らも是非とも「出家」しなさい!!」
それを聞いた金持ち息子たちは、こう尋ねました。
「いや・・・「出家」は両親の許可無くしてはいけない、とブッダは言っているハズですが?」
維摩さんは言いました。
「そうじゃとも!
しかし「出家」を形式的なものと考えてはいけないぞ。
「悟りを求める心」を起こしたならば、それがそのまま「出家」したということになるのじゃ!!」
それを聞いた金持ちボンボンたちは、大感激して帰っていきました。
・・・全財産をなげうってあなたについていこうとした、私の立場はいったいどうなるのでしょうか。
そもそも維摩さんは出家していません。
社会的地位も財産もそのままで、妻子までいて、会社の経営までやっています。
なのに知識も弁舌も出家した我々を遥かに凌いでいます。
こんなことがあっていいのでしょうか!?
私はあの人の見舞いには行きたくありません!!」

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