超訳【維摩経】
第18話 維摩、「空」を語る
2007.1.10
文殊菩薩は話題を変えることにしました。
「・・・維摩さん、そういえばあなたは大量の宝物を持ち、大勢の従者を召し使っていたはず。
どうして屋敷には誰もおらず、この部屋も空っぽなのでしょうか?」
維摩は答えました。
「世の中の全てのものごとは、「空」に等しいからじゃよ。」
文殊:「いやいや・・・なんでまた、全て「空」だということになるのでしょう?」
維摩:「「空」だから「空」なんじゃよ!ものわかりの悪いヤツめ!」
文殊:「・・・それでは説明になっていませんよ!」
維摩:「全ての対立や区別を超越したもの、それこそが真理であり、「空」と呼ばれるものなのじゃ。」
文殊:「では、その「空」はどうやって区別するのでしょうか?」
維摩:「「区別する」というハタラキ、それもまた「空」なのじゃ。」
文殊:「うーん・・・では、その「空」を知るためにはどうしたらよいのでしょうか?」
維摩:「世間で行なわれている62種類の間違った見解の奥底にこそ、それはひそんでいる。」
文殊:「62種類の間違った見解は、どうやって知るのでしょう?」
維摩:「大勢の解脱した仏たちの真っ只中で、それは見つけることができるのじゃ。」
文殊:「・・・その「大勢の解脱した仏たち」は、どこにいるのですか?」
維摩:「世界中の人々の心の動きの中をよく探してみるがいい!
それから先ほど「なぜ従者が誰もいないのか?」いう質問があったが、従者はたくさんいるぞ。
あらゆる悪魔や外道たち、彼らは皆、私の従者じゃ!
なぜか?
悪魔たちは皆、生死を操ることの中に快楽を見出しているが、私は生死を区別しないからじゃ。
外道たちは皆、様々な思想や見解をこねくりまわして喜んでいるが、私はそれらを全て理解した上で、それに流されることがないからじゃ!」