東西の古典を、きわめて平易な現代語に訳出する試みです。
意によって大幅に構成を改編し、読みやすくするために潤色を施しています。

updated 2021-12-07

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超訳【維摩経】

第21話 維摩、超能力を見せ付ける

2007.1.21

文殊と維摩のやりとりを聞いていたシャーリプトラ(舎利佛)は、ふと思いました。
「オッサンたち、話なげーなぁ・・・
そういや俺ら、ずっと立ちっぱなしやん。
この部屋、イスもないのか?
あーダリぃ!座りてー!!」
維摩はその雑念をすかさず感知すると、シャーリプトラを指さして言いました。
「はい、そこ!
お前さんはいったい、何のためにここに来たのじゃな?
真理を知るためか?
それともイスに座るためか?」
真っ向から図星を突かれたシャーリプトラは、ムッとして答えました。
「真理を知るためです。イスに座るためではありません!」
維摩:「うむ、よろしい。
そもそも真理を求めようという者は、自分の身命を惜しんだりはしないものじゃ。
もちろんイスのことなんか考えるハズがない、そうじゃろ?」
シャーリプトラ:「・・・」
維摩はシャーリプトラを一撃でやり込めると、文殊に話を振りました。
「文殊さん、あなたは確か一千万の一億倍という膨大な数の国に行ったことがあるのじゃったよな?
ひとつ教えてくだされ。
今まで見た中で、もっともグレートなイスはどこにあったかな?」
文殊は答えました。
「イスですか?そうですね・・・
ここから東に10の56乗x36の国を過ぎたところに須弥相という世界があるのですが、そこの主人である須弥灯王が座っているイスはグレートですよ。
飾りの美しさもそれはそれは見事なもので、まず一番といってよいと思います。
ただ、須弥灯王は身長が67万2千キロメートルある関係上、そのイスもまた67万2千キロメートルもあるんですけどね。」
それを聞くやいなや、維摩はサイキックパワーを駆使してそのイスを10の56乗x36国の彼方から瞬時に「お取り寄せ」しました。
しかも3万2千脚も。
突然70万キロメートル近い大きさのイスが3万脚以上も室内に出現したので、野次馬で来ていた連中は皆のけぞりました。
「な、なんで入りきっているんだ!?」
そうなのです。
物理的にはひとつだって入りっこないハズなのに、見ると確かに3万2千脚が室内に入っているのです。
しかも、それによって部屋が窮屈になることもなく、ヴァイシャリーの街にも何の影響も与えていないのです。
唖然としている野次馬を尻目に、維摩は文殊に言いました。
「これこれお前さん、せっかくイスを取り寄せてやったんじゃ。
座ってみたらどうじゃな?」
そこで文殊は一瞬で身長を33万6千キロメートルに巨大化させると、そのイスに腰掛けてみせました。
ほかの菩薩や弟子たちも真似して座ろうとしましたが、イスに登ることすら出来ない有様・・・
維摩はシャーリプトラに言いました。
「ホレ、お前さん、イスに座りたかったんじゃろ?
遠慮してないで座りなされよ。」
シャーリプトラは答えました。
「・・・ムチャ言わないで下さい。
このイスは私には高さも広さも厖大過ぎて、とてもではありませんが座れません・・・」
維摩は笑いながら言いました。
「なんじゃ、だらしのないヤツめ。
そんな時はどうするのかな?
そうだよね、持ち主にちゃんとお願いするんだよね。
ハイ皆さん、須弥灯王にお願いしてみましょう!」
菩薩や弟子たちが半信半疑で心の中で須弥灯王への祈りを捧げたその途端、なんと彼らは全員巨大化し、イスに座ることができたではありませんか!
シャーリプトラは思わず叫びました。
「あ、有り得ねぇ!!
いったいどうなっちまってるんだ!?
なんでこんな巨大なイスがひとつの部屋に収まりきるんだ?
なんでこんなにたくさんのイスがあるのに、窮屈な感じをうけないんだ!?」
維摩は言いました。
「わっはっは!
シャーリプトラよ、見たか?
これこそが悟りをゲットしたもののみが駆使することができる「ミラクルパワー」なのじゃ。
この能力を使うことができる境地を、ワシは「不可思議解脱」と名づける。
この能力を得た者はな、シュメール山(須弥山)を芥子粒の中に入れることだってできるのじゃよ。
しかもじゃ、シュメール山に住んでいる神々に気づかれることもなく、入れることができるのじゃ。
世界中の海の水をひとつの毛穴に入れることだってわけなくできる。
しかも、そうしても海に住む魚たちは全く気がつかないのじゃ。
海に住む竜神たちですら、自分がいったいどこに入っているのかわからないようにできる。」

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