東西の古典を、きわめて平易な現代語に訳出する試みです。
意によって大幅に構成を改編し、読みやすくするために潤色を施しています。

updated 2021-12-07

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超訳【維摩経】

第41話 維摩、ビシッとまとめる

2007.9.24

菩薩たちの「発表会」は続きます。

菩薩19:「「闇」と「光」、この2つこそが最も根本的な対立です。
そこを突きつめて研究した結果、私は「「光」があるところにのみ、「闇」がある」のだということを知りました。
「闇」とはつまり、「光」があたっていないというだけのことだからです。
もし「光」が全ての「闇」を滅ぼす時がおとずれたなら、その時こそ、まさに「光」も滅び去ります。
「闇」がなければ「光」はその存在を示すことができなくなるからです。
これこそ「絶対」の境地です!」

菩薩20:「いわゆる「涅槃」と「輪廻(転生)」、この2つこそが最も根本的な対立です。
そこを突きつめて研究した結果、私は「「涅槃」と「輪廻」は対立するどころか、実はどちらも存在しない」ということを知りました。
「輪廻」とは、イヤになるくらい何度も何度もこの世に生まれてきてしまって苦労が尽きないということだと定義されています。
そして「涅槃」とはそのような束縛から逃れ、解脱することができた状態だと定義されています。
でも、考えてもみてください。
「現世の束縛」なんて、本当にあるのでしょうか?
自縄自縛という言葉がありますが、実は皆、誰にも頼まれないのに自分で自分を縛り上げておいて、勝手に苦しんでいるだけなのではないでしょうか?
もしそうだとするならば、その「束縛」は元からあったものではないということになります。
仮にそのことに気づいて自分を縛ることをやめたとしましょう。
それは決して「解脱」などという大層なものではなく、単に自分を縛り始める前の「元の状態に戻った」だけに過ぎません。
「束縛」が存在しないところに「解脱」は存在できません。
現世をイヤがる気持ちがなくなった時、「涅槃」などを求める気持ちは消え失せます。
これこそ「絶対」の境地です!」

このように、菩薩たちはそれぞれの研究成果を発表し終わると、リーダーである文殊菩薩に話を戻しました。

菩薩一同:「文殊、最後はあなたの番ですよ!ビシッと総括お願いします。」

文殊:「フム、よろしい。
それでは私の考えを聞かせてあげましょう。
ありとあらゆることがらの真実の姿は、
「言葉にできない」
「説明できない」
「示せない」
「知ることもできない」
「問答や研究の対象とすることができない」
これこそ「絶対」の境地です!!

・・・維摩さん、なんだかすっかり話が長くなっちまいましたが、我々の意見はまぁ、こんなところです。

さぁ、今度はあなたの番です。

究極の「絶対」の境地ってヤツを教えてくださいな。」


維摩:「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


文殊:「す、すばらしい!すばらしすぎる!!

さらに「文字にもできない」し「言語にもならない」。

完璧です!完璧すぎます・・・

あなたのその無言の境地、それこそがまさに、究極の「絶対」の境地です!!」

このやりとりを目撃した5000人の菩薩たちは、一斉に維摩居士にひれ伏しました。

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