超訳【維摩経】
第46話 食べてもなくならないランチ
2007.12.1
「言われたことを忠実に守るだけ」を身上とする修行者たちは、維摩のその言葉を聞いて思いました。
「・・・食べろ、って言ったって、ランチは茶碗に1杯だけじゃないか。
ここにいる910万人全員で食べられるワケがないじゃないか!
まったくムチャ言うオッサンやで・・・」
「超菩薩」が口を開きました。
「コラコラ、維摩さんが注意したばかりじゃないか。
オマエらのチンケな器量で、この極上のランチを批評しようなどと思うなって。
いいか?
海の水はどんなに多いといっても、休みなく汲み上げ続ければ、いつかはなくなる時がくる。
しかしな、ここにあるたった1杯の飯を食べ尽くすことは、決してできないのだよ。
シュメール山のように巨大なオムスビをつくって全世界の人々に配布して、それでもなくならない。
50億年かけても、なくすことはできない。
何故だかわかるか?
ここにある食べ物は、そんじょそこらの食べ物とはワケが違う。
不滅の大法則、限りない智慧、動揺することのない心、それら全てをマスターした者の主食、そのオスソワケなのだ。
我らごときが食べ尽くせるワケがないだろう?」
半信半疑で皆で食べ始めたのですが、確かになくなりません。
910万人が食べて食べて、もう食べられないところまで必死に食べましたが、たった1杯の極上のランチは、「超菩薩」が持ち帰った時のまま、まったく減らすことができませんでした。
このランチを食べた皆はとても幸せで満ち足りた気分になり、身体もゆったりとくつろぎました。
また、全身の毛穴からなんともいえない良い匂いが立ちのぼりはじめました。
そしてそこら中に匂いは満ち溢れ、まるでこのランチの出処である「衆香」世界のごとくになりました。
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