東西の古典を、きわめて平易な現代語に訳出する試みです。
意によって大幅に構成を改編し、読みやすくするために潤色を施しています。

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超訳【維摩経】

第57話 維摩の正体

2007.12.29

世尊と維摩のやりとりを聞いていたシャーリプトラが口をはさみました。

「あのー、ちょっといいですか維摩さん。
さっきから何だかもの凄い話のオンパレードですが、いったいどこの世界で死んで生まれ変われば、そんな境地になれるのでしょうか?」

維摩:「コラッ!またそんなくだらん質問をしおってからに・・・
さっきオマエさんは自分で「「何も生まれない」し、「何も得ることはない」という悟りを得ている」などと言っておったのではないかな?」

シャーリプトラ:「あーっと・・・ハイ、言いました。
何ものも生まれません。従って何ものも死にません。
それが「ものごとの真実」なのです。」

維摩:「それがわかっておりながなら、なぜ「どこの世界で死んで生まれ変われば」などという質問をするのじゃ?

オマエさんは幻術師が作り出した幻の人に対しても同じような疑問を持つのかな?」

シャーリプトラ:「いやいや、持ちませんよ!
マボロシはマボロシです。いまさら死んだり生まれたりするわけがないじゃないですか。」

維摩:「世尊は常々「全てのものごとの本質はマボロシだ」とおっしゃっているハズじゃ。
聞いていないとは言わさんぞ!?」

シャーリプトラ:「・・・ハイ、そのとおりです。
「全てのものごとの本質はマボロシだ」と世尊はいつもおっしゃっています。」

維摩:「そらみろ!
それなのになんでオマエさんはさっきみたいなアホな質問をするのじゃ!?
誰が死ぬって?誰が生まれるって?
言ってみろ、オラオラオラ!!」

世尊が口を開きました。

「まぁまぁ維摩さん、その辺にしておいてやってくださいな。

シャーリプトラよ、このオッサンはだな、我々が「パラダイス」と呼んでいる世界の東の端、不動如来が支配する「妙喜世界」からやってきたのだよ。」

シャーリプトラ:「な、なんですって!?
すべてが美しく楽しいことばっかりの「極楽」を捨てて、こんなキタナくてアブナくてムカつくことばっかりの我らの世界に、わざわざやってきたですって!?
そんなこと、とても信じられません!・・・」

維摩:「コラコラ、またそんなことを!
では聞くが、太陽と暗闇とが同居可能だと思うかな?」

シャーリプトラ:「なにを言ってるんですか!
太陽が昇れば、その光によって暗闇なんてなくなっちまいますよ。
あたりまえじゃないですか。」

維摩:「では聞こう。
太陽は、なぜ昇ってくるのだと思うかな?」

シャーリプトラ:「え?太陽が昇る理由!?そんなこと聞かれても・・・
強いて言うなら、明るく光って暗闇を打ち消すためじゃないでしょうか。」

維摩:「そのとおりじゃ!
我ら菩薩も、それと同じなのじゃ。

我らはなぜ、こんなムサクルシイところにやってきたのか?

それは、決してアホウどものご機嫌をとるためではない。

まばゆい光でボンクラどもの目を覚まさせてやるためなのじゃ!」

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