東西の古典を、きわめて平易な現代語に訳出する試みです。
意によって大幅に構成を改編し、読みやすくするために潤色を施しています。

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超訳【維摩経】

第58話 維摩、切り取る

2007.12.29

その場に居合わせた聴衆約1000万人は、維摩のふるさとである「妙喜世界」の話がもっと詳しく聞きたくて、殺到しそうになりました。

世尊はそれを押しとどめながら言いました。

「おーっと、待った待った!みんな落ち着きなさい。

維摩さん!維摩さん!
ここはひとつ、こいつらに見せてやってくださいな。
あなたのふるさと、ビューティフルな「妙喜世界」の姿ってヤツを!」

維摩は世尊の依頼を受けて、サイキックパワーを集中し始めました。

(維摩の内心の声)
「やるぞ、やるぞ、やるぞ!
ワシにはできる。
ワシにはこいつらの希望をかなえることができる。
ワシにはこの場から立ち上がることなく、妙喜世界を表現することができる。
ワシには座ったまま妙喜世界を取り寄せることができる。
妙喜世界の山・川、海・泉・太陽・月・星・人・竜・鬼・城や町を取り寄せることができる。
目に見えないようなちっぽけなものたちから、かの地を支配する不動如来様にいたるまで、何もかもを持ってくることができる。
そら見えてきたぞ!
かの地にある宝石がちりばめられた巨大な3本の階段が見えてきたぞ!
その階段を使って、天人たちが天空との間を行き来しているのが見える。
みなが不動如来を拝んでいる。
みながお経を読んでいる。
おお、今度はかの地の住人たちが階段を使って天まで昇っていくぞ!
そうとも、この世界はこの世の一番上から一番下まで行き来自在なのじゃ!
ワシはそんな世界を片手でひょいと持ってくる。
まるで熟練した職人が使い慣れた道具を操るように。
まるで花を一輪つまみあげるように。
ワシはここに持ってくる。
「妙喜世界」を持ってくる。
持ってきてみなに示すのだ!!」

次の瞬間、維摩は右手で「妙喜世界」をつかみとり、みなの目の前に置きました。

「妙喜世界」の住人たちは、自分たちに何が起こっているのかサッパリ気がつきませんでしたが、一定以上のレベルに達している菩薩や修行者たちは気づいて叫びました。

「うわーっ!
な、なんだなんだ!?
誰だ?誰がこんなことをするのだ!?
た、助けてくれ!
神様、仏様!!!」

世尊は言いました。

「わたしじゃないよ。
維摩のオッサンがやっているんだよ。」

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