超訳【維摩経】
第61話 ブッダ、昔語りをする
2007.12.30
世尊はさらに言いました。
「こんな話を知っているかな?
遠い遠い昔のことだ。
薬王仏という名の仏が支配する「大荘厳」という世界があった。
その仏は約30億年の寿命を保ち、12億の菩薩集団と360兆人の修行者たちを従えていた。
その時に4大大陸を支配していたのが「宝蓋」という名の大王だ。
宝蓋王には1000人のこどもがいたのだが、こどもたちは全員、勇敢で力強く、健康で美しかった。
宝蓋王は薬王仏のために約8億年かけてさまざまな施設をつくって奉仕してきたのだが、8億年が過ぎたとき、こどもたちに告げたのだ。
「オマエらも手伝え!」とな。
そこで1000人のこどもたちはそこから8億年の間、薬王仏のため、ありとあらゆる人たちの安らぎのために奉仕した。
1000人のこどもの中に、「月蓋」という名の王子がいた。
彼はある日、ふとこう思ったのだ。
「我らは父さんの言いつけを守って全力で努力しているわけなのだけれど、なんかもの足りないような気がする・・・
もっと、なんというか、もっと高い成果をだす方法があるのではないだろうか?」
その時、突然空から声がした。
「ああ、方法はあるとも!
物の充実をはかる施策もいいけれども、「法を守る」施策の方が、ずっとイカしてるぜ!」
月蓋王子はたずねた。
「「法を守る」ですって!?それはいったいどうやったらよいのでしょうか?」
空からの声は答えた。
「知りたいかい?
それなら薬王仏に聞いてみなよ!」
月蓋王子はすぐさま薬王仏のもとに行き、質問したのだ。
「仏さま、「法を守る」というものがとてもイケていると聞きました。
それって、いったいどんなものなのでしょうか?」
薬王仏は答えた。
「ほう、それはいい質問だな。
いいかい?
「法を守る」とはいったいどういうものか。
それは様々な仏たちの教えを守ることだ。
仏たちの教えは、にわかには信じがたいものばかりだ。
見ることもできないし、考えているだけではたどり着けないところにある。
強いて言うならこんな感じかな。
それはあらゆる法律の上に位置する。
本体がない、寿命がない、空に等しく、新たに発生しない。
人々を悟らせ、またその教えを広めさせる。
その前では神々たちもひれ伏す。
ありとあらゆるものは「有る」と宣言することで、逆に無常・空・無我・寂滅を説明し、むさぼり執着する外道たちをビビらせる。
これらの元となる仏の教えを信じて理解し、そのまんまではなくちゃんと相手を見て工夫して説明すること。
それができる者を「法を守る者」と呼ぶ。
何も発生しない、「自分」もない、「生きる」ということもないという認識をしっかりと持ち、争わず、「自分のもの」という考えを起こさない。
「本質的な意味」を重視して、「言葉上の問題」は気にかけない。
「応用力」を重視して、「知識量」は気にかけない。
「教え」に従って、「人」には従わない。
作り出されたものは全て滅びることを知り、生まれたものが死ぬように、老いたり死んだりという現象すらも滅びることを知る。
発生と消滅を結ぶ12の連鎖が途切れることがないことを知り、さらにそれに対してアレコレと粘着しない。
そうすることを「法を守る」と名づけるのだ!」
天帝インドラよ、それを聞いた月蓋王子はより一層の「柔らかな心」をゲットしたのだ。
そしてその場で自分が着ていた宝石ジャラジャラの衣装を脱いで薬王仏に捧げると、こう言った。
「仏さま!
私はあなたが滅びてから後、「法を守る」ことにいたしましょう。
私の成功を祈ってください!」
薬王仏は微笑みながら言った。
「うんうん、キミならできるとも!私が保証するよ。
世紀末にキミが大活躍している姿が見えるようだ!」
そして月蓋王子はただちに出家すると修行に励み、5つのマジカルパワーをゲットし、大量の知識と怒涛の弁舌力をゲットし、薬王仏がなくなった後、16億年近くにわたっておおいに活躍したということだ。
月蓋王子がたった一人で教化した人数は10兆人にのぼり、そのうち140万人は修行者となった。
そして彼のおかげで救われた人は、それこそ数え切れないほどだったのだ。
天帝インドラよ、その時の宝蓋王は、今どうしていると思う?
今この世界で宝炎如来と呼ばれている仏、彼こそがこの宝蓋王の生まれ変わりなのだ。
そしてその時の1000人のこどもたち、彼らもまた今この世界で全員が仏となっている。
クラクチャンダ仏からローチャ仏までの1000人がそれだ。
そして、今話した「月蓋王子」とは、ほかでもない、この私のことなのだ!」
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