超訳【維摩経】
第0-1話 ある日の仏たち
2009.2.14
こんな話を聞いたことがあります。
かつて、世尊こと仏さま(ブッダ)がヴァイシャリー市の郊外にあるアムラさん所有のマンゴー樹園を借り切って、500人の弟子と8000人の修行者たちと一緒になごんでいたことがありました。
そこに集まっていたのは、ひととおりやるべきことをやり終わったものばかりで、これといった悩みも心配ごともなく、悠々自適の毎日でした。
また、3万2千人にもおよぶパワフルな超人(=菩薩)たちも勢ぞろいしており、それはもう、なかなかにぎやかな様子。
そしてブッダが説教をはじめると皆は真剣に聞き入るのですが、それはまるで大海原の真ん中にシュメール山がそびえ立っているかのようでした。
ヴァイシャリー市から団体で話を聞きに来ていた大勢の金持ち息子たちは、それぞれが手土産として持ってきた宝石ジャラジャラの日よけ傘をブッダにささげました。
すると何ということでしょう!
ささげた傘がみな合体してひとつになり、全世界を覆いつくしたではありませんか!
シュメール山やヒマラヤ山などの高い山から海、川、泉なども全部入っています。
太陽や月、星までもが傘の中に入っているのです。
ブッダが超能力を発揮してやっていることは間違いないので、みな度肝を抜かれながらもブッダから目が離せませんでした。
その時、ヴァイシャリー市の金持ち息子のひとりである宝積(ほうしゃく)くんが進み出て、こう言いました。
「世尊さま!
あなたの眼はまるでハスの花びらのようにきれいです。
心はきよらかで落ち着きがあり、大勢の人々にやすらぎを与えてくださいます。
私はそんなあなたを猛烈に尊敬しています!
今見せられたようなミラクルを軽々と発揮し、無敵の能力でありとあらゆるものを理解し、みなに利益を与えます。
私はそんなあなたを猛烈に尊敬しています!
あなたは「あらゆるものごとは「有る」のではなく「無い」のでもなく、ただお互いの依存関係があるだけだ」と見切られました。
菩提樹の下で悪魔を降参させ、悟りを完成されました。
「もはや何も得ることもなく、これといってすることもない」と言いながら、大勢の外道たちをことごとく打ちまかしました。
あなたはかつて、以下の3種の完璧なる「法の輪」を回転させました。
- 「ありとあらゆる苦しみの正体を見抜く法」の輪
- 「ありとあらゆる苦しみを克服する法」の輪
- 「ありとあらゆる苦しみを克服したことを確認する法」の輪
ああ、あなたは生きとし生けるもの全てが逃れられずに苦しんでいる「老いと病と死」すらも癒すことのできるお方、まさに「医王」と呼ぶにふさわしいお方です。
私はそんなあなたを猛烈に心から尊敬しています!
あなたはまるでシュメール山のようにそびえ立ち、他人からどんなに褒められようが貶されようが、ビクともしません。
善人と悪人のどちらに対しても分け隔てなく慈しみをもって応対され、その心のハタラキの平等であることといったら、まるで「虚空」のようです。
先ほど私がささやかな傘をお贈りした時、私はその傘の中に全世界が入ってしまうのを目撃しました。
そのようなド派手なパフォーマンスを見せられると、我々のあなたへの尊敬は増すばかりです!
あなたはいつも一種類の言語で話されるだけですが、世界中の人々はみな、あなたが「自分たちの国の言語で話してくれた」と感じます。
あなたはいつも同じことしか言いませんが、世界中の人々はみな、それを聞いてそれぞれにふさわしい多彩な効果をゲットします。
あなたが言っていることはひとつしかありませんが、それを聞いた人たちは、ビビったり喜んだり、嫌がったり疑ったりと、実に様々な反応をするのです。
こんなことは、まさに仏ならではのことです。
あなたは全知全能であり、しかも誰よりも努力家です。
ありとあらゆる束縛を断ち切り、既にアチラ側に渡ってしまわれていますが、それでも我々全てを救おうとしてくださいます。
あたなは既に、「死」も「生」も乗り越えられました。
この世の中の事柄について知り尽くしながらも、あたかもハスの葉に水滴が落ちた時のように、まったくこだわらずにスルーされます。
ああ、あなたこそまさにオールマイティ。
そんなあなたを私は猛烈に尊敬しております!」
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