超訳【維摩経】
第0-3話 シャーリプトラ、ブッダを疑う
2009.2.14
その話を聞いていたシャーリプトラは思いました。
「ん? 菩薩の心が清らかになると世界が美しくなるだって?
ちょっとまてよ・・・
今、我々が住んでいるこの世界は、お世辞にも美しいとはいえない。
というか、むしろキタナイしアブナイし、もうウンザリなところだ。
でも、ここは世尊が仏として治めている世界。
・・・おかしい。 なんで美しくないんだ?
まさか世尊は、菩薩時代に「清らかな心」を持てなかったのでは?
・・・いやいや、そんなバカな!」
ブッダはシャーリプトラの疑惑をテレパシーで察知すると言いました。
「こらこら、シャーリプトラよ、ナニを考えているんだ?(苦笑)
眼の見えない人は太陽や月を見ることができないが、それは太陽や月のせいだとでも言うのかい?」
シャーリプトラは答えました。
「いやいや、なんですかそれは!
太陽や月が見えないのは、あくまでもその人の眼が見えないからであって、太陽や月には何の責任もありませんよ。」
ブッダは言いました。
「そうだろう、そうだろう。
この世界が美しく見えないのも同じことだよ。
オマエらが見ない、というかデキが悪くて見ることができないだけなのだ。
いいか? この世界は充分に美しい。
それがオマエらの眼には映らないだけだ。
私のせいにするんじゃない!(笑)」
その話を聞いていた螺髻梵王(らけいぼんのう)が口をはさみました。
「こら、シャーリプトラ!
この世界がキタナイなどと、よくも言えたもんだ!
世尊のいらっしゃるこの世界は、もの凄く美しいところだぞ?
オレ様の眼には、この世界はまるで飾り立てられた大王宮のように映っているというのに!」
シャーリプトラ:「いや、そう思いたいのはヤマヤマなのですが、私の眼に映るこの世界は、デコボコしていてトゲトゲしていてあちこちに穴が開いています。
とてもではありませんが、美しいといえるような状態ではないのですが・・・」
螺髻梵王:「バカヤロウ!
もしも「この世界がデコボコして見える」などというのであれば、それはオマエの心がデコボコしているからだ。
いいか?
菩薩たるもの、ありとあらゆるものに対して「分け隔てなく平等」に接するという気持ちを忘れてはいけない。
世尊になったつもりでこの世界を見てみろ!
どうだ、きわめて清らかで美しいだろう?」
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