事業本部長(以下、部長):「どうだ、引き続き売れておるかな?」 営業:「ええ、ひと頃のような勢いはありませんが、ポツポツと注文が入っています。ありがたいことですねぇ。」 部長:「そうか、それは何よりだ。しかし、いまだに累積赤字を解消するには至っていないし、我らの人件費はいまだかつて一度も支払われたことがないという状況に変わりはない。作家への原稿代も払えていないし、もうちょと何かブレークスルーがないとキビシイなぁ・・・次回作の「超訳・夢中問答」の執筆ははかどっておるのかな?」 作家:「それはまぁ、ボチボチと・・・」 制作:「部長! それに関して、重大な問題があることが判明したのですが、今お話していいでしょうか?」 部長:「な、なんだ!? どんなことだ?」 制作:「先日もチラッと話題になっていたかと思いますが、現在制作中の「超訳・夢中問答」は300ページ近い「大作」となる見込みです。 それ自体は大変に喜ばしいことなのですが、いったい単価をいくらにしたらよいのかという問題が出てきました。 既刊の「超訳3部作」は、それぞれ80ページ強で、千円均一としています。 これは超訳文庫創立時のポリシーである「1ページ10円」に乗っ取った設定なのですが、これをそのままあてはめると、なんと3000円とかになってしまうのです。 いくらなんでも、これはちょっと高すぎますよねぇ・・・」 仕入:「従来の装丁を踏襲する限り3000円がギリギリの線です。それ以下では原価率の観点からもまるで見合いません。」 営業:「うーん、自家制作本といえども仕上がりに関しては決して低い方ではないと自負してはいるものの、3000円の価格設定は確かにキツイ。市販本は上質紙使用のフルカラーで400ページもあって1600円ぐらいのヤツがザラにあるわけだし、内容はともかくとして、外形的な比較をされると話にならないなぁ・・・」 部長:「むむむ、確かに・・・ 家内制手工業の弱点のひとつがそこにあるわけなのだが、逆に様々な点で小回りがきくという強みもあるはずだ。なんとか智慧を絞ってみようではないか!」 作家:「3分冊にしたらどうですかね?  上・中・下として、それぞれを1アイテムとして扱えば、原価的にも見合いますし、営業的にもやりやすいんじゃないですか?」 制作:「な、なるほど! 確かにそれなら従来の製本手法を完全に踏襲しつつ、3倍の量のテキストが扱える!」 営業:「アイテム数が増えるのは、こちらとしてもやりやすくなるので有難い!」 仕入:「そうですね。それであれば、原価構成は従来どおりですので悩む必要はなくなります。」 部長:「おお、素晴らしい名案だ! そうすれば全部書きあがるのを待つことなく、今年中には上巻が発刊できるだろう。この手の商売は何よりも「ライブ感(動いてる感)」が重要だからなぁ。是非、そうしようではないか!!」 作家:「本当は全部書き上げた上で構成を確認したいんですがね・・・ 背に腹は変えられないってとこですか。」 部長:「そうだな、最初の方と最後の方で登場人物のキャラ設定が変わっちゃったりしても困るしな・・・」 営業:「そんなの連載マンガとかでは日常茶飯事ですよ。一部のマニア以外気にしませんって!」 部長:「いや、原文がネットで公開されているにもかかわらず、我々の本を買ってくれるような方は、気にするんじゃないかな?」 営業:「そうですね・・・ 最終的にあんまりヒドイ場合は改訂版を贈呈するぐらいの対応が必要かも知れませんね。」 部長:「そうだ、上・中・下が出揃った段階で、改訂済みテキストによる合本を制作し、それを進呈するというのはどうだろう?」 一同:「だからそれの価格設定はどうするのですか!?」(苦笑)

事業本部長(以下、部長):「朝晩に加えて、日中もだいぶ涼しくなったなぁ。もうすぐ秋か・・・ ところでどうだ? 「超訳・夢中問答」の執筆ははかどっておるのかな?」 作家:「ええ、まぁボツボツと。だいぶノリも思い出しましたし、前後の脈絡もつながってきました。 あとはまぁ、ひたすら書くだけかと。」 部長:「おお、それは何よりだ! 実は先ほど、今までにテキスト化された部分を、試しに書籍の体裁にしてみたのだよ。そうしたらなんと、50ページ近くの分量になった。20話もないのにこの分量だから、最終話まで全部訳せば250ページを余裕で超える計算だ。大作の予感バリバリではないか!」 作家:「ですねぇ、執筆に費やした時間だけでみれば、もうすぐ「金剛経」を仕上げるのに要したのと同じぐらいになりますよ。あれ、本体だけだと60ページもないですからね。・・・まぁ、分厚ければよいというものでもないわけで、「金剛経」における哲学的到達点の高さは実に恐るべきものなのですが。」 部長:「うん、ワシもそう思う。本当のことを言えば、言葉や文章など、長ければ長いほど失敗に近づくのだ。ワシが「長編」嫌いなのは、なにも飽きやすい性格だからというわけではなく、冒頭ないしは最終章、もっというなら「後書き」だけ読めば済むような内容のものを、何百ページもにわたって引き伸ばしてあることにウンザリしているからなのだ。 もちろん、「長編」であっても内容の濃いものはたくさんあるのだがな。」 作家:「同感です。巷に溢れる「ただ長いだけ」の文章は、本来内容がないものをさらに薄めて、思いっきり引き伸ばして作られているわけですが、名作「長編」の場合は、印刷された文字以上のさらに膨大なインフォーメーションとメッセージ、つまり情報量をその背後に秘めているのです。 つまり、つまらない「長編」の正体は「超短編」に過ぎず、傑作「長編」の正体は、膨大な「長編」を高度なテクニックによって圧縮したものであるのです。 つまらない話はどうやっても膨らましようがありませんが、優れたテキストはそこからさらに何倍にも膨らますことができて、かつ味が薄まることもありません。 そしてそれこそが、私の「超訳」の源泉なのですよ。」 部長:「なるほどな。今回の「夢中問答」は、90話以上ある比較的長編だが、一問一答形式を取っているおかげで一話ごとのまとまりがあり、間延びすることがない。なんとか最後まで書ききって、年内には出版に漕ぎつけたいところだなぁ。 過去の3作は原文が中国語であったが、今回は初めて日本語からの超訳であるわけだし、我らが「ぶんちん堂」としてもエポックメイキングなものとなるのは確実なのだから。」 作家:「日本語、といっても古文に近いですけどね。(苦笑) まぁ、秋の夜長を利用して、淡々とやりますよ。清涼なる秋月のごとき文章の「冴え」を、せいぜいご期待くださいませ。」 部長:「おお、なんと頼もしい!!  それではこのあいだ発売されたビール、もとい発泡酒の「冴」をケースで買ってくるとしよう。今晩は大作完成の前祝だ!! 作家:「気が早すぎますよ・・・(苦笑)」 ※カインズホーム各店舗(ベイシアグループ)にて発売中

05
9月
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部長:「朝晩は涼しいが、まだ日中は暑いなぁ・・・ ところで作家よ、調子はどうだ?」 作家:「悪くありませんね。新しい資料も入手できましたし、インスピレーション全開です!」 部長:「おお、それは素晴らしい! ・・・というか、なんで拡散傾向なんだよ!「夢中問答」に集中しろと言ったはずだが?」 作家:「まぁまぁ部長、雲門禅師も言っているではありませんか。「平地上死人無數、出得荊棘林者是好手!」って。一見横道にそれるように見えたとしても、それがまた次の作品への肥やしになるんですよ。」 部長:「それはなんか使い方が違うのではないか? ワシはむしろオマエに老子の「大道甚夷而民好径」という言葉をおくりたいが・・・ なぜ大道を直進しようとしないのだ!? その方が早いだろうに。」 作家:「いえいえ、無門禅師も言っているではありませんか、「大道無門、千差有路」と。「横道」もまた、「大道」そのものなのですよ!」 部長:「・・・全く口ばっかり達者で困ったものだ。わかったからなるべく早く「夢中問答」を仕上げてくれよ。「千差有路」というのであれば、「遊び」と「仕事」を同時進行させることも可能なハズだろう?」 作家:「いやいや、私などまだまだその境地には・・・」 部長:「そこで弱ぶくむなよ!」(苦笑)