夕刻、ぶんちん堂・書籍出版事業本部にて。

事業本部長(以下、部長):「諸君、お疲れさま! 今、「超訳・維摩経」の増補改訂版が完成した。これでようやく、半年以上も欠品していた書籍版「超訳・維摩経」を再び世に問うことができる。これも全て諸君らの努力のおかげだ。本当にありがとう!」

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部長:「今回特筆すべきは、背文字が入ったことだな。見てみろ!俄然、それっぽいぞ!(喜)」

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部長:「それに裏表紙を見ろ! ぶんちん堂のロゴマークだ、可愛いだろう? 古代文字の金文の「文」を図案化したものだ。簡単そうに見えるだろうが、結構苦労したんだぞ。」

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部長:「おまけに本文の文字を一まわり大きくした。高齢化時代に優しい紙面となったかと思うが、どうだろう?」

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部長:「・・・どうした?なんかテンション低いみたいだが。」

営業:「・・・いや、完成したのは素直に嬉しいと思いますよ。
ただ、あれだけの時間と労力を費やして、やっと6冊作れただけというのがちょっと。」

部長:「いいじゃないか、最初は6冊でも。
原稿はもとより資材も機材も揃っているし、なによりも制作ノウハウが確立できたわけだから、あとは印刷・製本の作業さえすれば、いくらでも刷り増せるだろ?」

制作:「いやいや、気軽におっしゃいますけどね。各工程毎に、まだ課題山積なのですよ。」

部長:「何が問題なんだ?」

制作:「なによりも、印刷工程です。
今回の作業のために両面印刷可能な高速プリンタを導入して下さったことは、本当にありがたく思っています。
おかげでゲラ刷りは一瞬で終了するようになり、レイアウトがとても楽になりました。」

部長:「いいじゃないか。」

制作:「問題は用紙です。
通常のコピー用紙は芯が印刷方向に対してタテに入っている、いわゆる「タテ目」です。
ところが、超訳文庫用に大量に仕入れた書籍用紙は、「ヨコ目」なんですよ。
おまけに相当に薄手です。
すると何が起こると思いますか?」

部長:「いや、なんだろう。初版のときはそんなに問題なかったハズだが?」

制作:「用紙が詰まってしまうのですよ!
今のプリンタは本当に優れものなのですが、紙送りがキッチリした機構となっていることが仇となって、表面は大丈夫なのですが、裏面を刷ろうとしますと、とても嫌な音を立てて詰まってしまうのです。
見てください。なんとか詰まらずに出てきたところで、こんなんですよ。」

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部長:「うーむ、確かにこれでは・・・」

制作:「通常の方法だと、ほぼ90%以上の確率でこうなっていたのですが、我々は長時間かけて研究・協議を重ね、ついにロスを10%以下にまで減らすことに成功したのです。
今回はこのブレークスルーによって、生産装置をフル稼働することができ、ようやく何冊か完成するところまでこぎつけました。
それでも歩留まりはまだとても悪く、印刷担当者の負担はかなりのものです。」

部長:「うーむ、それはしかし、連続印刷しようとするからなのであって、片面印刷後しばらく静置して紙の「コシ」が戻るのを待ってから裏面を印刷するようにしたらよいのではないかな?」

制作:「そんなことはとっくにやっています!その結果がこれなのです。
部長、用紙を変更しましょう!
そうすれば自動両面印刷ユニットも使用可能になりますし、紙詰まりや静置、仕上がり確認などにかかっている時間・資材・手間を大幅に削減できます。
・・・何よりも、印刷ボタンを押すときの精神的負担がなくなれば、こんなに素晴らしいことはないです。」

部長:「うーむ・・・ しかし、手触りといい見た目といい、書籍用紙に勝るものはない。
また、この版型をとる以上、ヨコ目を採用せざるを得ない。
紙厚は、確かにもうちょっと厚手でもよいかも知れないが・・・」

仕入:「部長! その議論は一年前に初版を制作するにあたって散々したではありませんか!
印刷して配布するだけなのであれば、通常のコピー用紙で充分です。
入手が容易で最も安価ですし、紙詰まりもありません。
で、ホチキスで留めるだけの平綴じ製本とすれば、あれこれと機材を導入する必要もなく、どんどん刷り増すことができます。
それでも部長は「安っぽい」のひと言でそれを却下し、書籍用紙の導入を決められました。
で、プリンタの標準印刷サイズであるA4では「サイズが大きすぎて携帯に不向き」だという理由でそれを半分にしたA5サイズの版型にこだわられました。
印刷に適しているのはタテ目ですが、それを半分にして横置きにすると、ヨコ目となってしまい、ページがめくりにくく、背の糊もうまくつかなくなってしまいます。
それが我々が「仕方なく」ヨコ目用紙を採用した理由なのです。
部長!今からでも遅くありません。
A4が横置きで印刷できる大型プリンタを導入しましょう!」

部長:「いや、買う金も置く場所もないよ!
やっぱりタテ目でないとキビシイのかなぁ。」

制作:「はい!」

部長:「営業担当よ、お前はどう思う?」

営業:「通常のコピー用紙をホチキス留めしたものなど、誰が金を出して買うもんですか!
書籍には書籍用紙、ここは絶対譲れません。
手触りやら見た目やらが全然違います。
費用も、前回のように数千枚仕入れれば、一枚辺りのコストはそれほど変わりませんよ。」

部長:「お前がそんなことをいうから、前回大量にこの用紙を仕入れたんじゃないか!
用紙を厚手に切り替えたくても、この在庫分がなくなるまでできないし・・・」

制作:「現在の用紙在庫は、約100冊分です。」

部長:「・・・しょうがない、多少のロスは諦めて、作るだけ作っちまうか。
「無門関」と「金剛経」の原稿もあるから、それぞれ30部作って、そこで用紙変更を再検討しよう。」

経理:「それが「全部売れたところで」ですよね?」

部長:「・・・」

作家:「ところで原稿料はいついただけるのでしょうか?」

部長:「「全部売れたところで」だよ。」

(一同、苦笑)

部長:「ところで販路の拡大はできておるのか?」

販売:「はい、「Web Shop」のリニューアルは既に完了しております。
あとは品物の入荷を待つばかりです。」

営業:「ケータイ対応は?」

販売:「既に実装しているのですが、動作検証作業中です。」

営業:「決済・配送手段の多様化は?」

販売:「固定費のかからない範囲内で検討中です。
個人情報保護等の観点から、購入者の氏名や住所をお尋ねすることなく、メールアドレスだけで発注・配送できる仕組みを目指しています。
また、ネットバンキングやクレジットカードなど、お客様にとって便利な決済方法も、あわせて検討中です。」

営業:「・・・今できることは?」

販売:「銀行振込による決済、氏名住所をお尋ねしての配送のみです。」

(一同、苦笑)

部長:「まぁ、それはそれでいい。
ともかく目の前の印刷・製本作業をしてしまわないと、何も前に進まないということが、よくわかった。
それはまぁ、明日以降やるとして、今日は思いっきり飲んでくれたまえ!」

一同:「そうでなくても、毎晩思いっきり飲んでるじゃないですか!」

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