17
8月

夕刻、ぶんちん堂・書籍出版事業本部にて。

事業本部長(以下、部長):「ああ、今日も一日暑かったなぁ。朝晩はまだ涼しいのが救いだが、こう暑いと、気力はもとより思考能力も低下気味で困ったものだ。マムシドリンクでも飲んで気合を入れるしかないか・・・ どうした、浮かない顔をして?」

営業:「いや、今回また新たな発注があったので、焼きたてホカホカのヤツを出荷前に念のためにパラパラとめくって検品していたところ、誤字が発見されたのですよ。」

部長:「なに!? 各種原稿は相当念入りに校正作業をしたハズではなかったのか?」

営業:「はい。 しかし、今回の部分はまったくもって盲点でした。以前、「超訳・無門関」冒頭の序と目次部分のデータを作家が酔っ払って失ってしまったというご報告をしましたよね?」

部長:「ああ、あれか。情けない話だよな、まったく!」

営業:「ええ、それで今回、この際だから本文全体を見直して相当に加筆訂正を実施し、あわせて誤字脱字の類も修正したのですが、序と目次に関しては特に書き直すほどのこともなかったので、初版時の印刷物をスキャナOCRで取り込んで、体裁を整えることで原稿データを作ったのですよ。最近のOCRはかなり認識率も高いので、ほとんどそのまま使うことができたのですが、そこに油断があったようです。」

部長:「おお、これか。 ・・・なるほど、いきなり「~」が「1」に、「七」が「セ」になっているな。この部分は私も何度も目を通したのだが、気がつかなかったなぁ・・・ やたらと画数の多い難しい漢字などは一所懸命確認したのに。」

営業:「ですよねぇ、私も相当細かくチェックしていたのですが、まるで気がつきませんでした。人間って、多少の誤差は脳内で修正してしまうので、黙読するだけではちょっとしたエラーには気がつかないんですよね・・・」

制作:「このOCRで作成した目次部分には、それ以外にも、「ゃ」であるべきところが「や」となっている箇所が発見されています。OCRは小文字が苦手なんですかね。」

部長:「うーむ、都合5箇所ぐらいあるなぁ。内容的に影響するような部分ではないのだが、「完璧を期す」という点からは、なんともカッコ悪いと言わざるを得ない。」

制作:「今回出荷対応した分については全部やり直したのですが、既に出荷された分はどうしましょうか?」

部長:「むむむ・・・ 「無償で交換」と言いたいところだが、そうでなくとも厳しい台所事情だ。ここはひとつ、お客様の「ご理解」を求めたいところなのだが・・・」

営業:「そうですね。なんとも不細工な話ですが、書店で売られているような結構高額な本でも、いきなり正誤表が入っていることもあるわけですし・・・」

経理:「そうですね。かの名作「ジョジョの奇妙な冒険」ですらも、第1話でいきなり「何をするだァーッ」とか、思いっきり「ん」が抜けちゃっていたにもかかわらず、66刷になるまで訂正されなかったそうですし、気づいた都度直すということでいいんじゃないですかね?」

部長:「そうだなぁ、あれはむしろ直されちゃって残念なぐらいだったよ。今回の誤植も、かえって作品の「レア」度が高まるものと受け取っていただけるとありがたいと思うばかりだ。」

営業:「そうですよ。パンだって焼き上がりはロットによってみな完全に同じ形状ではないではないですか。「手作りの味」の範疇ですよ!」

部長:「気楽なこと言いやがって! あれは食べたらなくなってしまうものだから、まだいいんだよ。ずっと残っていくものでそれはなかなかキビシイのだ。・・・とはいえ、いちいち交換に応じるのもキビシイのもまた事実。誠に申し訳ないが、ここはご理解いただくしかないな。」

販売:「というわけで、お求めになったもので誤植を発見された皆さま、まことに恐縮ですが、ご事情ご理解くださいませ。」

一同: < (_ _)>

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