東西の古典を、きわめて平易な現代語に訳出する試みです。
意によって大幅に構成を改編し、読みやすくするために潤色を施しています。

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超訳【金剛経】

第9話 肩書きは肩書きに過ぎない(一相無相分)

2008.11.22



ブッダは続けます。

「なぁスブーティ、お前はどう思う?
いわゆる「聖人」修行の初段にあたる「須陀洹(スロタパンナ:しゅだおん)」という境地に到達した人がいるとして、その人は「よっしゃ!オレは聖人に到る流れに乗ることができた。つまり須陀洹レベルゲットだぜ!!」などと考えたりするだろうかね?」

スブーティは答えました。

「いや、それはないですね。
だって、「境地を獲得した」などといったところで、実際にはその人は何も得てはいないじゃないですか。

強いて言うなら、その人が得たものは「見ることも聞くことも、嗅ぐことも味わうことも、触ることも考えることもできない」ものなのです。
逆に、それであるからこそ、その人は「須陀洹」レベルということになるのです。

もしも「オレ様は須陀洹だ!」などと考えるようであれば、その人には「自我=オレ様は存在する」などという恐るべきカンチガイが思いっきり残っていることになります。
そんな人は「自分以外のもの」が存在すると誤解し、「物体が存在する」と誤解し、愚にもつかない執着をどんどん強めていくばかりです。
そういう人が聖人への流れへ乗ることはあり得ません。

そんなわけですから、「須陀洹」に達した人は、決してそれを意識しません。」

ブッダ:「なるほど。
それならば次の修行段階である「斯陀含(サクリダガーミン:しだごん)」ではどうだろうか?」

スブーティ:「それも同じことですよ、先生。
「斯陀含」というのは、輪廻転生の無限ループから抜け出せる一歩手前の状態のことです。
このレベルに達した人が死ぬと、もう一度だけ生まれてきて、そこで最終段階に入るといわれています。
しかし、そんなものは実際には何も無いのと同じなのです。
そんなレベルに達したと言ったところで、それを証明してみせる方法は何もないのですから。」

ブッダ:「なるほどな。
それではその次の段階の「阿那含(アナガーミン:あなごん)」ではどうだろうか?」

スブーティ:「いや、ですからそれも「斯陀含」と同じことですよ。
「阿那含」というのは「二度と生まれてこない者」という意味で、要するに輪廻転生ループ離脱直前の状態なのですが、これもまた同様に、証明する方法はありません。
ですから、「オレ様は阿那含レベルをゲットした!」なんて、言うだけむなしいことじゃないですか。」

ブッダ:「確かにな。
それでは最終段階とされる「阿羅漢(アルハット:あらかん)」ではどうだ?」

スブーティ:「・・・先生、ですからそれもないですって!
「阿羅漢」というのは「尊敬されるべき者」という意味なのですが、もしもそんなレベルに達したならば、「ヘッヘッヘ!オレ様は尊敬されるべき者だ!」なんていう考えを起こすはずがないでしょう!
そんなゲスな考えを起こさなくなったからこそ、「尊敬されるべき者」と呼ばれるわけなのですから。

だいたい、「尊敬されるべき者」なんていう表現もおかしいです。
これではまるで、「尊敬する人」と「尊敬される人」が別々に存在するみたいじゃないですか。
この考え方の根本には、最初に言ったのと同じように「自分」がいて「自分以外」の人がいて・・・などという恐ろしいカンチガイが横たわっているのです。
そんなカンチガイ野郎が「尊敬されるべき者」であるわけがないです。

ついでに申し上げておきますが、先生はいつだったか、私のことを「阿蘭那(アランナ)」だとおっしゃいましたよね?
「阿蘭那」というのは「争いがない」という意味で、「もはやあらゆる心の葛藤が発生しない」という、修行者にとっては最高のほめ言葉です。
なるほど、確かに私は「尊敬されるべき者」であり、その中でもピカイチの才能を誇る「阿蘭那」です。
それでも私は自分がそんな者であるなどということを意識することはありません。
もし私がそんな考えを起こすようなヤツだったとしたならば、先生、あなただって私を「阿蘭那」であるなどとおっしゃらないでしょう?」

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