超訳【維摩経】
第11話 アーナンダ
2006.12.8
一人息子ラーフラ(羅喉羅)にまで断られてしまった世尊は、とうとうアーナンダ(阿難尊者)に命令します。
「アーナンダ!お前なら行ってくれるよな!?」
アーナンダは言いました。
「えーっとですね、これは今まで誰にも話さなかったことなのですが、こんなことがありました。
以前、あなたは体調を崩して寝込んだことがありましたよね?
その時私は、なにか栄養のあるものを食べさせなければいけないと考えて、朝早くから牛乳を探して奔走していました。
あるお金持ちの家に目をつけ、「さぁ牛乳をもらいにいこう」とばかりに門をくぐろうとしたまさにその時、ふいに誰かが私を呼び止めました。
「おいコラ!お前さん、そんなところで何をやっとるのじゃ?しかもこんなに朝早くから。」
・・・それが維摩さんだったのです。
私は、「世尊さまが病気になったので、牛乳で栄養をつけてもらおうと思うのです。」と答えました。
維摩さんは顔をしかめると、指を口の前に立てて言いました。
「シーッ!このバカモン!めったなことを言うんじゃない!!
あのお方はありとあらゆる災いの元を消し去ることに成功した尊いお方じゃぞ!
そんなお方が病気になんぞ、なるはずがないじゃろう?
お前さんは、その間抜けな口をしっかり閉じて、すぐに帰りなされ。
こんな話をもし外道たちに聞かれたらどうするんじゃ!
「え?ブッダが病気だって?ダッセー!!(爆)
あのペテン師め、ついにボロをだしやがったな!!
自分の病気も治せないようなヤツが言うことなんて、誰がまともに聞くかってんだよ!!」
とか悪口を言いふらされることは必至じゃ。
いいか?ブッダはこの世で一番偉い人じゃ。その身体にはチリひとつほどのケガレもないのじゃ。ピッカピカじゃ!!
なんの悩みも病気もないのが、あのお方の仏たる所以なのじゃ。
はいはい、わかったらとっとと帰りなさい。」
その時の私の情けない気持ちがわかりますか?・・・
私は誰よりも長いこと、世尊であるあなたのお近くについて、誰よりもたくさんあなたの話を聞いてきた人間です。
それなのに、出家もしていないようなジジイに、まるでかなわないなんて・・・
それでもあなたは私に、あくまでも彼のお見舞いに行けと言うのですか?!」
・・・このように、500人の仏弟子たちは、それぞれ維摩との因縁話を持ち出して、全員が「彼のお見舞いには行けません」と断ってしまったのでした。
人間の弟子たち全員に断られたブッダは、それぞれに悟りを得て「人間」の限界を超越することに成功している菩薩たちに話をふりました。
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【中国武術論】

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