超訳【維摩経】
第17話 維摩、病気の原因を語る
2007.1.9
文殊菩薩は見舞いの言葉を述べました。
「維摩さん、我々はあなたが病気であると世尊(ブッダ)から聞かされて、こうしてお見舞いにやってきました。
お具合はいかがですか?
寝込んでおられるということですが、積極的な治療はなさらないのでしょうか?
世尊はあなたのことを、とても心配なさっています。
病気の原因はわかったのでしょうか?
もうずっと前から病気だったのですか?
直す方法はあるのでしょうか?」
維摩は、文殊のこの質問攻めにも動ずることなく、こう答えました。
「ああ、なぜ病気になったのかって?
それはな、ワシも含めてのことじゃが、世の中あまりにもバカが多すぎるからじゃよ。
なんだかんだといったところで、人間は皆、根本部分にとてつもない愚かさを抱えているのじゃ。
そしてそこから全ての「愛執」とか「執着」とか、そういったウザいものが発生している。
だからこそ、ワシは病気になったのじゃ。
言い換えるなら、「全ての人々が病んでいるから、ワシは病気になった」とでもなろうか。
だからもし、全ての人々の病気がなくなれば、その時こそワシの病気は治るのじゃ。
例えるなら、裕福な家庭の一人っ子が寝込んだようなものじゃ。
たった一人の跡取り息子が病気になれば、父も母も心配のあまり一緒に病気になってしまうということがあるじゃろ?
そしてその子の病気が治れば、父母はホッとして、病気なんてどこかへ飛んでいってしまうのじゃ。」
文殊:「それってつまり・・・」
維摩:「そう、「偉大なる慈悲」ってヤツじゃよ。ワシは並外れて慈悲心が強いからこそ、病気になったのじゃ!」
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