別訳【臨済録】
喧嘩上等!臨済さん(臨済和尚、覚醒す)
2006.7.22
臨済宗の開祖である臨済禅師の本名は、義玄(ぎげん)といいます。
義玄くんは幼少の頃から賢くて親孝行もする、温和な学究肌の人でした。
最初は経典研究の塾に入って熱心に研究活動をしていたのですが、ある日、「こんなんじゃダメだーっ!」と感じて、速攻で黄檗和尚の門下に加わります。
で、マジメに修行を続けて3年ほど経ったある日のこと、門下生のリーダー(首座)に声をかけられました。
首座:「おい、そこの若いの。お前ここに来てどれぐらいになる?」
義玄(臨済):「はい、3年になります。」
首座:「和尚のところに問答に行ったか?」
義玄:「いえ、まだです。というか、何を質問したらよいのか見当もつきません・・・」
首座:「そうか。じゃあいいことを教えてやろう。和尚のところに行ったらな、「仏の教えって、要するにどういうことですか?」と言ってみろ。」
義玄:「はい!アドバイスありがとうございます!早速行ってきます!」
しばらくすると義玄くんが泣きながら帰ってきました。
首座:「どうだった?」
義玄:「質問を言い終わる前に殴られました・・・(泣)」
首座:「そうか。もう1回チャレンジしてみろ。」
しばらくすると、また泣きながら帰ってきました。
義玄:「やっぱり殴られました・・・もうサッパリわけがわかりません。(泣)」
首座:「そうか。くじけずにもう1回行ってこい!」
しばらくすると、義玄くんが帰ってきました。
やはり泣いています。
義玄:「先輩!自分、もうダメっス・・・
殴られてばっかりで、まともに質問もできやしません・・・
もう、自分、辞めます。向いてないっス・・・(号泣)」
首座:「そうか・・・辞めたいっていうなら俺は止めないが、最後にちゃんと和尚に挨拶していけよ。」
義玄くんが退出すると、首座は全力で黄檗和尚のところに先回りしました。
勿論、打ち合わせのためです。
首座:「和尚!今からメソメソした若者が辞めさせてくれと言いに来る筈ですから、うまくやってくださいね。奴は伸びますよ。」
義玄くんが暇乞いにやってきたのを見て、黄檗和尚は言いました。
黄檗:「大愚和尚のところへ行ってみなさい。」
さて、義玄くん、言われたとおりに大愚和尚のところに来ました。
大愚:「どこから来た?」
義玄:「黄檗和尚のところからです。」
大愚:「黄檗の教え方はどんなだった?」
義玄:「いやそれが・・・質問しようとすると殴るんですよ。自分も3回も殴られちゃって・・・いったい自分の何が悪かったんでしょう・・・」
大愚:「お前・・・和尚がそんなに熱心に指導してくれているのに、ノコノコと俺のところまでやってきた挙句、「自分の何が悪かったか」などと言うのか?」
義玄くんはそれを聞くなり、ズドーンと悟りました。
義玄:「なーんだ、たったそれだけのことか!」
それを聞いた大愚和尚、義玄くんに飛びかかり、首を絞めながら言いました。
大愚:「この寝小便タレめ!ついさっきまでメソメソしていたくせに、今度は「たったそれだけか」だと!?何様だ?あ?!いったいお前に何がわかったというんだ!?言ってみろ!オラオラオラ!!」
義玄くんは無言のまま、大愚和尚のわき腹にボディブローを3発叩き込みました。
大愚和尚は義玄くんを突き放すと言いました。
大愚:「お前の師匠は俺じゃない。黄檗だ!とっとと帰りやがれ!!」
義玄くんが戻ってきたのを見た黄檗和尚は言いました。
黄檗:「お前はあっちへ行ったりこっちへ行ったりして、いったい何をやってやがるんだ?!」
義玄:「あんたのことを心配して戻って来てやったんだよ。」
黄檗:「どこに行ってきやがった?」
義玄:「あんたにいわれた通り、大愚和尚のところへさ。」
黄檗:「ヤツは何と言ってた?」
義玄:「いきなり首絞めてきやがったので、ボディに思いっきり3発ぶちこんでやったよ。」
黄檗:「何だと!?あの野郎・・・今度あったらぶん殴ってやる!」
義玄:「いや、今度じゃない、今すぐくらえ!!」
義玄くんはそう叫ぶと、黄檗和尚を思いっきりハリ倒しました。
黄檗:「グフッ・・・このキチガイめ、よくもやりやがったな!」
義玄:「クヮーッッッ!!!(喝)」( ゚д゚)
・・・。
と、これが「臨済の喝」の第一声であるということです。
彼の武勇伝はまだまだ続きます。