東西の古典を、きわめて平易な現代語に訳出する試みです。
意によって大幅に構成を改編し、読みやすくするために潤色を施しています。
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別訳【旧約の預言者たち】

1.エゼキエル

2004.9.30 「エゼキエル書」 読書ノート

 
旧約聖書に登場するあまたの使徒、預言者たちの中でも、その「妄想力」をもって異彩を放つとされた「預言者エゼキエル」さん。
ああ、あまりのナイスポーズに、つい挿絵も入れてしまいました(byミケランジェロ)。

彼は2600年以上前の4月5日、河のほとりで「異常」としか言いようのない「霊体験」をします。
詳しい描写は省きますが、何やらものごっつい異形のものが、まばゆいばかりの光とともに降臨し、「食え」といって巻物をエゼキエルに食べさせたりします。
 
因みに岩波版ではちゃんと書かれていますが、新約とのからみからか、はたまた、「神の名を軽々しく口にしてはいけない」というモーゼの戒律を守っているのか、この異形のものの名は、大概「主」となっているようです。
 
この本では頻出するにもかかわらず、秘められた彼の名、それはユダヤ教の絶対神「ヤハウェ」(本当は「ハ」も小文字)です。
 
元々、旧約聖書は古代ヘブライ語で書かれており、その時の表記は、神聖四文字『YHWH』だったようです。で、発音できないので、母音を補ったものと思われます。(岩波版は、これをさらにギリシャ語訳したものを底本としています)
 
で、あんまりものごつい「霊体験」だったもので、エゼキエルさん、一週間ほど茫然自失としていたようです。
 
・・・で、当然「ヤハウェ」さんは 「何しとんねん、働かんか自分!!」と、種々の指示をエゼキエルに出しまくります。相当な無理難題も含まれており、まさに「パシり」状態。(奥さんも死んじゃったりします)
 
やれ、殺せ、滅ぼせ、ともう大変。で理由は決まって一言、 「彼らは反逆の家だから」・・・
 
ページ数にしたら150pもない本ですが、解説が100ページ近く入ります。それだけ難解だということでしょうか。特に、「40章以下は原文の破損が甚だしく、(中略)訳者独自の解釈により、(中略)一応細かい点まで筋が通った、とおもう。」などと訳者自身に告白された日には、おいおい・・・と思わざるを得ません。後半、急にわかりやすくなるのはそのせいかよ、と。
 
なので、彼の預言者としての真骨頂は、冒頭の「ヤハウェ」出現描写と、第7章の詩「終わりが来る」辺りかなぁ、と思います。

終わりが来る、この地の四方の隅に終わりが来る。 (中略)
終わりが来る。終わりが来る。
終わりが君に臨む、見よ、それはくる。 (中略)
すべての手はだらりとたれ、すべてのひざからは水が流れる。 (中略)
すべてを滅ぼしつくす。 (中略)
こうして彼らはわがヤハウェなるを知るであろう。

こ、怖すぎます・・・ホラーです。何もそこまでしなくても・・・という感じです。
救いはほとんどありません。なにしろ絶対神は「殲滅戦」を仕掛けようとしているのですから・・・
 
ノア、ヨブ、ダニエルら、敬虔なる使徒たちですら、本人以外は家族に至るまで殺戮する、と断言しています。
そんなに怒らなくても、と思いますがねぇ・・・
 
で、40章以降は第1神殿の建築構想みたいな話になってきます。
要は、イスラエルに神殿を築くことで神の怒りを静めようとしたのでしょうね。
実際、天変地異はおこり、ビビッた「反逆者」たちは神殿を建て始めます。
で、「おお!神殿ができるという預言、当たったじゃん!」ということで、やっとこさエゼキエルさんの預言者としての地位が確固たるものになった、ということのようです。
 
いやあ、旧約聖書って、本当に面白いですね。

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