東西の古典を、きわめて平易な現代語に訳出する試みです。
意によって大幅に構成を改編し、読みやすくするために潤色を施しています。
※超訳文庫は好雪文庫に名称変更しました。【タイトル変更のお知らせ】

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好雪ひらひら

【夢魔の書】象元

2006.3.18

一兵卒として従軍。
 
ここは何処だ?
今はいったい、いつなのだろう。
 
皆の鎧や武具などを見る限り、戦国時代の中国のようであるが、詳しいことは何もわからない。
 
ただ、わかっていることもある。
 
ある建物の内部に刀が隠されており、その刀を得た者は世界を手中にすることができるという伝説があるのだ。
 
そして、どうやら、これがその建物のあるエリアらしい。
 
四方から殺到する人の群れ。
あちこちで戦闘が始まっている。
 
将軍達が争奪戦を繰り広げている中、単独捜索行動開始。
 
ある建物に駆け込むと、全力で屋上まで駆け上がる。
 
鍵を破壊して屋上に出ると、外のヒサシに移動し、その下の空間に飛び降りた。
 
建物の外壁にある空間であり、建物の内部からでは行くことのできない場所である。
 
奥行き3m程の隠し部屋を発見し、中に入ってみると、男が一人倒れている。
 
かなり昔に死んだようだ。
服装からすると、彼もどこかの兵士だったのか。
 
死体の傍らに、一振りの刀(柳葉刀)を発見。
 
間違いない。これだ。
 
見下ろすと、大勢の軍団がこれを求めてうごめいている。
 
頭上でも声が聞こえはじめた。
 
折角入手したこの刀、奪われるわけにはいかない。
 
どうしたら見つからずに包囲を突破することができるだろうか?
 
直感的に、これは刀の形態を取っている必要は無いと考え、その場で刀を潰し、ただの金属の塊にすると建物から飛び降りた。
 
その塊を懐に、群衆をかき分け、一目散に逃走。
 
それからどれぐらいの時間が流れたのか定かではないが、気づくとどこかの都を歩いていた。
 
大勢の人でごったがえす百貨店のような建物に入ると、古美術品展が開かれている。
 
メインの展示物は、様々な文様が描かれた5m四方ほどの黄色い盤であったのだが、一見して閃いた。
 
私は、いきなり歩み寄ると、盤の中央部に持参した金属の塊を投げつけ、叫んだ。
 
「これはこうやって使うものだ!」
 
塊は、中央に達した瞬間、低い振動音とともに1枚の黄色い縦長の四角い板(ドミノ板に似ている)に姿を変えた。
 
固い木片を打ち鳴らしたかのような甲高くも澄んだ音が響き渡り、盤面中央からもう一枚、同様の板が出現。
 
一対の板は中央で交わると、甲高い音をたて、次の瞬間、対角線上に分かれると色を青く変じ、4枚となった。
 
その4枚は、次の瞬間には8枚に、16枚に、32枚に、と音をたて、その色を様々に変化させながら、みるみる増殖・変形を繰り返しはじめた。
 
ただ、膨張していくわけではなく、数が増えるに従って、個々の素子は小さくなっていくのである。
 
発音の間隔が徐々に早くなってゆく。
 
皆が呆然と見つめる中、音はついに連続音となり、やがて聞こえなくなった。
 
様々に変化を続けながら明滅を繰り返す「それ」は、ついにわずかに藍色を帯びた暗黒へと姿を変えた。
 
盤上に浮かぶ一抱えほどのサイズの暗黒。
 
中で、時折、小さな光が無数に明滅するのが見える。
 
なんという(暗黒の)奥深さであろう。
 
私は再び叫んだ。
 
「見よ、ここに宇宙がある!!」

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