好雪ひらひら
【夢魔の書】ウルムルトゥにて
2006.7.29
ウルムルトゥは、古代都市の遺跡。
今や完全なる廃墟であり、往時の栄華はもはや見る影もない。
アルト・カルマ(別名アルト・ウルム)と呼ばれる墳墓を発掘すると、たくさんの遺骸が見つかった。
皆、一様に、口から紐のようなものが垂れている。
調査の結果、彼らの胃から、緑がかった自然石が発見された。
口から出ていた紐は、その石に結わえつけられていたのである。
私は更に調査を進め、ある仮説に辿り着いた。
それは以下のようなものである。
その昔、ウルムルトゥの男たちは、ある一定の年齢に達すると、一種の通過儀礼ともいうべき「厄落とし」の儀式を行なっていたと考えられる。
「厄年」の男たちは、ある種の緑石(種類不明。現在成分分析中)に紐を結びつけ、それを飲み込まなければならないのだ。
そして、そのままの状態で一定期間を過ごし、あらかじめ定められた祭日に、紐を引っ張って石を取り出し、アルト・カルマに捧げる習わしなのである。
飲み込む石のサイズは、自分で選ぶことができる。
その石が大きければ大きいほど、利益(りやく)が大きいとされるのだが、大き過ぎると取り出すことができないこともある。
石が取り出せなかった者は、生きたまま生贄として奉げられてしまうしきたりであり、先に出土した遺骸は、すなわちその生贄たちなのだ。
- 以下のメニューバーをクリック⇒ ジャンルごとに開閉
- 画面左上の「好雪文庫」ロゴマークをクリック ⇒ 好雪文庫トップページへ戻る
- メニュー上下の横長バーの「HOME」をクリック ⇒ 各コーナートップページに戻る
中国武術家である徐紀(Adam Hsu)老師の論文をご紹介。
【中国武術論】
作家による古典翻訳以外の文章です。
夢日記、怪奇体験、食べ歩き、随筆等、バラエティに富んだ独自のワールドをお楽しみくださいませ。
好雪片片
霞が関官庁街の食堂めぐり記録です。
2002~2003年の取材内容を元に書かれています。