東西の古典を、きわめて平易な現代語に訳出する試みです。
意によって大幅に構成を改編し、読みやすくするために潤色を施しています。
※超訳文庫は好雪文庫に名称変更しました。【タイトル変更のお知らせ】

updated 2024-01-21

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好雪ひらひら

【夢魔の書】青、緑、白、そして赤の夜

2009.3.30

 
青白い光りを放つ井戸を覗き込むと、水底に白いネグリジェ姿の若い娘が沈んでいるのが見える。
 
水面に青い液体を垂らすと、ゆっくりと緑色に変色する井戸水。
 
そして緑色は井戸べりを這い登ると、路面に緑色の光を点々と浮かびあがらせながら道の向こうに続いていった。
 
光の痕をたどっていくと、近くの古い石造りのビルの下に着いた。
 
光はそのままビルを登ると、、4階の窓に緑色のマークを浮かび上がらせて止まった。
 
窓の中に緑っぽい人影が見えたが、顔が白く変形しており、よくわからない。
 
ビルの外にある鉄製の階段を登っていくと、そこは地元の人たちが集うレストランであった。
 
レストランの裏口の外は隣のビル(?)の屋上になっており、そこに離れの建物が建てられているのが見えた。
 
そこにオーナーの息子が住んでいるらしいのだが、扉は閉めきられている。
 
店の人に訊ねると、もう永らく息子の姿は見ていないという。
 
レストランの一番奥の席は街のヤンキー風情のたまり場となっていたので、牛丼の大食い勝負を申し込む芝居を打って入り込むことに成功した。
 
リーダー格の男は乾いた目つきの若者であったが、痩せた下半身をしていてお世辞にも強そうではない。
 
話をしてみたが、彼らは一様に沈んだ面持ちだ。
 
女性が死んだことと関係があるのだろうか。
 
しかし、彼らが女性を殺したようにはとても思えなかった。
 
激しい憎悪を感じて窓の外を見ると、何やら赤っぽいオーラに包まれた2人がこちらを伺っている。
 
そして2人は、数度にわたってなにやら赤いトマトのようなものを投げつけてきた。
 
それは窓ガラスに当たると、意味ありげな白い文様となって、やがて消えていく。
 
そう、あの赤い塊りは、彼らが投げつける憎悪なのである。
 
顔を見ようとするも、やはり顔は白く歪んでいて誰だかわからない。
 
しかし、彼らの姿には見覚えがある。
 
死んだ娘の年老いた両親である。
 
オーナーに話を聞くためにレジへいくと、なにやらカウンターに通告状のようなものが置いてあるのが目に入った。
 
「話し合いも限界であるので、近々強制的に退去を迫る予定」といった内容の、ビルの持ち主からのものであった。
 
溜め息混じりに奥さんがこぼす。
 
なんでも16年ぐらい前にビルオーナーが建物の一部を入居者に相談なく改修してしまい、それ以来、関係がこじれたのだとのこと。

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