東西の古典を、きわめて平易な現代語に訳出する試みです。
意によって大幅に構成を改編し、読みやすくするために潤色を施しています。

updated 2022-06-18

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超訳【井上円了】妖怪学

【妖怪学】コックリさん考

2005.12.15

第5心理学部門第4講「心術編」第41~46節「コックリさん」より

最近「コックリさん」が大ブームになったようだね。
「狐狗狸」とか「告理」とか、いかにもいわくありげな字を当てちゃって、どんなことでも占えるということで、大いに流行した挙句、色々問題を引き起こして、大阪府では警察がこれを禁止するなどの騒動になっているとか。

その方法は大まかに言うと、3~40cmぐらいの長さに切りそろえた竹を3本用意し、真ん中をひもで縛って、その上に飯櫃の蓋を乗せ、3人でそれを取り囲んで片手を蓋に軽く添え、「コックリさん、お移り下さい」とかを念じ続け、10分ぐらい念じてから、質問をすると、その蓋が傾いたり回転したりして答えるというものだ。

勿論、こんな装置に鬼神が取り憑いてお告げを下すなんてことがあるわけがなく、やっている人たちが手を動かして傾けたりしているのは明白である。

私も学生達と一緒に何回かやってみたが、動くときもあり、動かないときもあり、回答が正しいこともあり、正しくないこともあった。みんなが知っているような事柄については正答率が高く、知らないこと、あるいは未来のことについては、正答率が低かったり、回答がなかったりした。
知っていることが示されるというのは、我々が自分で動かしているからであり、未来のことがわからない、当たらないのは自分たちがわからないからである。たまに当たることがあるのは、偶然と断言してよい。

この手の現象は、要するに、中途半端な位置に手を長時間差し出しておくと疲れてフラフラしてきて、あとはきっかけさえあれば容易にあちこちと動いて、正しく律することができなくなるというだけの話である。

古代からある由緒正しい技のように思っている人もあるようだが、これはいわゆる「スピリチュアリズム」すなわち鬼神術として1848年にアメリカで確立されたものに過ぎない。

この術は、その後イギリス、フランスに伝播して、ついには全ヨーロッパを席捲し、1859年にはこれを専門職として行う者1000人、それを信じる者150万人の多きに及んだという。

これらのそもそもの発端は、1826年にニューヨークの靴屋の息子として生まれた、アンドリュー・ジャクソン・ダビス氏である。
彼は学校もほとんど行かず、周りからは白痴だと思われていたのだが、幻視・幻聴が甚だしく、遂には自分は精霊と交信することができると信じるに至った。
これを見たある商人が、彼のこの能力で金儲けをしようと思いつき、あちこち連れ歩いては病人を診察させた。
すると彼は、その病気の原因や事情を明らかにし、治療方法までスラスラと言うことができたので、すっかり評判となり、彼に診て欲しいという人たちが行列をつくるに至ったとのこと。
で、その手法を示す本を刊行したりして大いに繁盛したらしい。

で、それを研究した人たちが編み出したのが、質問するとテーブルが動く、ないしコツコツと音を出して回答するという技術「テーブルターニング」、「テーブルトーキング」である。

さて、明治17年(1884年)のことである。
アメリカの帆船が伊豆下田の沖で難破し、乗組員達が船が直るまでしばらく下田に逗留した際、現地の人にこれを伝えたらしい。
もとより暇つぶしにやっていたので、その辺にあり合わせの材料でやってみせ、英語でその名を伝えたのだが、現地の人がそれを発音できず、覚えることができなかったため、蓋がコックリコックリと動く様から「コックリ」と呼んだのが、我が国の「コックリさん」の始まりである。
その後、下田に立ち寄った船頭達がこれを東西に広めたという寸法である。
調べたところ、明治18年に東海地方で流行し、その後京阪から山陽、南海、中国地方にまで達している。同じ頃、千葉、埼玉にも伝わり、明治20年には東北に伝播、その翌年には北陸地方に伝わっている。

まぁしかし、始めにも述べたが、これはつまり、いわゆる「予期不覚」というもので、皆あらかじめ「コックリさん」に関する情報を聞かされており、蓋が勝手に動くと思いこんでいる上に、手が疲れてくると本当に動き始めるので、いよいよそれを信じて無意識のうちに自分の手を動かすに至るというだけの話であり、こんなもので正しく事実が占えるわけがない。

新聞にも載った笑い話を一つ挙げよう。
巣鴨に住んでいる勇くんという男が、オタツという女性と結婚したのだが、この「コックリさん」にはまってしまって、尋ねて曰く、「コックリさんコックリさん、オタツさんには私以外にも付き合っていた人がいたのではありませんか?いたのであれば、足をあげてください。」すると、コックリ装置が傾いて片方の足があがった。オタツさんはそれを見て負けじと「コックリさんコックリさん、勇さんには今でもいるでしょう。いるのであればこっちの足を!」するとやっぱり足があがったので、とうとう喧嘩をしだした。
見かねたお母さんが、「コックリさんコックリさん、今のは冗談ですよね?冗談であれば右に回ってください。」と言ったところ、右に回り出したので、一同大爆笑となったそうな。

皆さん、遊びでやっているうちはいいけれども、あまりこの手のものを真に受けないように。

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