別訳【法華経】
弥勒、つっこむ
2008.3.21
(前回までのあらすじ)
大勢(数千万人規模)の聴衆を相手にお釈迦様が何か発言するたびに天からは異物が降り注ぎ、大地は震動し、形あるものは砕け散り、なんだかよくわからないモンスターが大量に出現し・・・ と、もうすっかり大変な騒ぎ。
そして遂に大地が割れたかと思うと、「数十億人の修行者が割れ目から噴出してきて空中浮揚し始める」などという、もはや悪夢のような情景が展開します。
で、お釈迦様、口を開いて一言。
「彼らは皆、数十億年前に私が教え導いたのだ!」
さすがに皆、それはちょっと・・・ と思ったらしく、既に正統伝承者として直接指名を受けている弥勒菩薩ことマイトレーヤが聴衆を代表して質問します。
弥勒はブッダにつっこみを入れました。
「ちょ、ちょっと待ってください! なんでそうなるのですか!?
この数十億年の古代からやってきた無数の人たちを貴方がたった一人で教え導いたですって!?
世尊! 貴方は元々、シャカ族が治めるカピラ城の王子でした。
で、その後色々あって「究極の悟り」をゲットした挙句、方々で大勢の聴衆を動員する講演会を開きまくって今に至るわけですが、その期間はどう計算したって40年かそこらです。
今、我々の頭上を飛び回っている「修行者」たちの数はベラボウで、たとえ一人一人を一瞬で教え導いたとしたって、数千万年はかかりそうな感じです。
しかも貴方は彼らに手ほどきをしてから今のような状態に達するまでに「それぞれ数十万年の修行期間が必要だった」などとおっしゃる・・・
いいですか、世尊!
貴方がおっしゃっていることはですね、つまりはこういうことです。
黒髪もツヤツヤの元気あふれるピチピチの青年、たとえば25歳ぐらいだったとしましょうか、が、どう見ても100歳以上はいっちまっているヨボヨボの老人を連れてきて、「やぁみんな! 私の息子を紹介するよ!」と言っているようなものです。
しかも100歳の老人までその若者を指差してこんなことを言うのです。
「そうじゃとも、このお方は私の父じゃ! 私の生みの親なのじゃ!!」
・・・こんなこと、我らはもちろんのこと、世間の誰も信じてはくれませんよ!
「私はウソは言わないよ」というのが貴方のいつもの口癖ですが、これはさすがにキビシイです。
こんな話を経典にして残したところで、後世の人はまるで信じないことは言うまでもなく、相手にもされませんよ!
この際なので言わせてもらいますが、貴方のお話を聞いていると、時々もの凄く不安な気持ちにさせられるんですよ!!
貴方は「心配するな、大丈夫だ! 新しい乗り物に乗ったときは、誰しもそんな気持ちになるもんさ!!」などとお気楽なことをおっしゃいますが、ものには程度というものがあります。
頼みますよ、世尊!
もうちょっと我々が信じやすいような説明でお願いします!
あんまり我々で遊ばないでください!!」