別訳【祖堂集】
三代 ビシャフ仏
2010.2.1
想像を絶するほどの遥かな昔、二代シキ仏が滅した後、長年月を経た頃に、ビシャフ(毘舎浮、vessabhu)という名の王子が現れました。
「ビシャフ」とは、「オールマイティー」という意味です。
彼の一族は、ビバシ仏やシキ仏と同じ「コンダンニャ氏」でした。
「コンダンニャ」とは、「火」のことです。
父親は「スッパティータ」という名で、母親は「ヤサヴァティー」といい、彼の治める国は「アノパマの都」と呼ばれていました。
「スッパティータ」とは「善のともしび」、「アノパマ」とは「喩えようがない」という意味です。
ビシャフ王子は、悟りを得て三代目の「ブッダ」となったのですが、それは次のようなものでした。
「うむ、わかったぞ・・・
人々が「これが自分だ」などと考えている「肉体」は、実際は「地・水・火・風」の四大元素がより集まって形成された、単なる化合物に過ぎない。
そして人々が「これが自分だ」などと考えている「心」だが、実際はそれらの化合物が外界からの刺激を受けて化学的に反応しているだけなのであり、何も「心」を発生させる主体があるわけでなない。
外界からの刺激が途絶えれば、化学反応は一定の段階で停止する。
「心」など、所詮その程度のものなのだ。
「罪」とか「幸福」とか呼ばれるものも、また同じことである。
操り人形は操られている間はイキイキと人間のように動くが、操るものがいなくなれば直ちに停止して、単なるモノとして地面に横たわる。
我らもまた、これと同じではないか。」