別訳【維摩経】
第2話 シャーリプトラ
2006.11.29
ちょうどその頃、維摩の住むヴァイシャリーの町に来ていた世尊(お釈迦様)は、町外れのマンゴー樹園で、500人の弟子と修行僧8000人、それから32000人の菩薩を相手に説教の真っ最中でした。
維摩の思考をテレパシーで察知した世尊は、一番弟子のシャーリプトラ(舎利佛)に言いました。
「おい、維摩のオッサンが見舞いに来て欲しがっているぞ。
シャーリプトラよ、お前さん、ちょっくら行ってきてくれないか?」
表情を曇らせるシャーリプトラ。
「いや、そうしたいのはヤマヤマなのですが、私、どうもあのオッサンが苦手なんですよ・・・
実は以前、林の中で瞑想にふけっている時に、維摩のオッサンに因縁をつけられたことがありましてね。
あのオヤジ、座っている私のところにやってきて、いきなりこう言ったんですよ。
「何をこんなところで引き籠っとるんじゃ、いい若いモンが!!
修行は、ただ座り込んでおればよいというものではないぞ。
あれやこれやと忙しく社会生活をこなし、かつ、心の安定を失わないようにすること、それを修行というんじゃ!
わかったか、ボケ!!」
・・・で、私、言われっぱなしで一言も反論できなかったんです。
ホントすみません、あのオッサンだけは勘弁してください・・・」