別訳【内藤湖南】
学変臆説 3.そして大統一へ
2009.1.2
「天」は循環運動するのだという。
今さら、昔と同じことが起こるハズもないのだが、「すべては移り変わる」という究極の真理に照らしてみれば、この「分裂・分散」傾向が永遠のものであるハズもないわけで、いずれ終わるときがくることは間違いないだろう。
この頃の世界情勢を見ていると、私にはどうも「その時」が近づいているように思えてならない。
「分裂・分散」へ向かうベクトルは、今まさに逆転しようとしているのではないか?
ヨーロッパの国々は今、「ナショナリズム」の嵐が吹き荒れて、これまでにない緊張感に包まれている。
ちょっと見ただけでは、たくさんの国家間の対立が強まっているだけなので、これまでの「分裂・分散」傾向の続きのように思ってしまいがちだが、私はそうは思わない。
これこそは、来るべき「大統一」へと向かう予兆に他ならないのだ。
かつて中国にはたくさんの小国があったが、春秋・戦国時代を経て7つの有力国家に集約されていき、ついには秦がそれらをまとめて一つにしてしまった。
分裂・分散傾向とは逆のハタラキの到達点、それは全てが「ひとつ」となることだ。
今、ヨーロッパの国々は勢力争いを繰り返している。
大きいものが小さいものを呑みこみ、さらに大きくなっていっている。
アジアやアメリカでもまた、同じことが起こっている。
これこそ紛れもなく、世界が「大統一」への階段を上り始めたことを示しているのだ。
それではその「大統一」は、どのようにして成し遂げられるべきなのだろうか?
「軍事力」によるべきだと言うのであれば、ロシアを見てみろ。
既に世界中の国々の恐怖と心配の元になるほど強まっているぞ!
「経済力」によるべきだと言うのであれば、中国人やアングロサクソン人たちを見てみろ。
もはや世界中の富や財を吸い尽くそうとしているぞ!
いずれにせよ、「取ったもん勝ち」であることは間違いない。
交通・通信手段の発達した今、もしもこの「大統一」が完成されるならば、それは最早、「東西」にそれぞれ大きな国のまとまりがポコっといくつか並ぶ、などというレベルでは収まらない。
必ずや、全地球規模の「大統一」ということになるだろう。
軍事・経済のみならず、宗教ですらもこの流れから逃れることはできまい。
キリスト教にはたくさんの異なる教義を持つ流派があるが、その一長一短を補い合いながら、ついに「ひとつ」のものとなる時が来るのだ。
そしてその流れはキリスト教だけにとどまることなく、仏教その他の宗教にも及ぶであろう。
ああ、そうだとも。
「天」は歴然と循環運動しているのだ!